【9月29日関芳弘文部科学大臣会見要旨】AI研究の新事業で31件採択
関芳弘文部科学大臣は2026年9月29日の記者会見で、「AI for Science革新的研究推進事業(ARiSE)」の採択課題31件を決定したと発表した。北極域研究船「みらいⅡ」の引き渡し日が12月18日に決まったことも報告した。質疑では、18歳未満の選挙運動を禁じる公職選挙法の規定を憲法違反とした地裁判決や、ノーベル賞への期待と基礎研究の支援策、東京大学の次期総長選考、コミュニティ・スクールの導入拡大、アジア競技大会の運営トラブルについて答えた。
AI活用の研究事業、初の採択は31件
ARiSEは、AIを科学研究に生かす「AI for Science」の分野で、世界を先導する科学研究成果を生み出す事業だ。世界トップレベルの研究機関や研究者との戦略的な国際連携なども進める。関大臣は、こうした取り組みを推進する「フラッグシッププログラム」だと説明した。
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文部科学省は、ARiSEと、あらゆる分野にAI活用を広げる「AI for Science萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD)」を両輪として進める。2つの事業を通じて、日本がAI for Scienceの先進国としての地位を築くことを目指す。AI for Scienceをめぐる国際競争のなか、2027年度予算の概算要求には両事業の拡充を盛り込んだという。
記者は、ARiSEの採択課題の公表は今回が初めてだと指摘し、研究に期待することを尋ねた。関大臣は、日本の強みを最大限に生かし、重点分野に集中して投資する課題が選ばれたと述べ、例として3つのプロジェクトを挙げた。
マテリアル分野では、新素材の開発速度を10倍にすることを目指し、マテリアルAIの基盤を構築する。ライフサイエンス分野では、あらゆる生物のゲノム情報データなどを統合したゲノム言語モデルをつくり、創薬などの開発を加速させる。大型研究施設の分野では、国内11の放射光施設で行う測定や解析の自動化・自律化を目指している。
北極域研究船は12月18日に引き渡し
もう1件の報告は、2021年8月から建造を進めてきた北極域研究船「みらいⅡ」に関するものだ。12月18日に造船会社から国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)へ引き渡されることが決まった。
引き渡し後、JAMSTECは複数の海域で観測作業の訓練などを行う。年度内には首都圏でお披露目を行い、2027年4月には青森県や函館市で一般公開を実施する予定だ。各イベントの詳細は、決まり次第、JAMSTECや開催地の地方公共団体から発表される。関大臣は、みらいⅡを国際研究プラットフォームとして積極的に活用し、引き続き海洋分野の研究開発を通じて日本の発展に貢献していくとの文部科学省の考えを示した。
違憲判決へのコメント控える
質疑の冒頭では、18歳未満の選挙運動を禁じる公職選挙法の規定をめぐる裁判が取り上げられた。記者によると、この規定は憲法違反だとして17歳から20歳の4人が国を訴えた。東京地方裁判所は9月25日、表現の自由を保障した憲法に違反するとの判断を示したという。
関大臣は、判決についての報道は承知しているとしたうえで、公職選挙法は総務省が所管する法律だとしてコメントを控えた。主権者教育など教育活動への影響を別の記者から重ねて問われると、現段階で学校の主権者教育に直ちに影響が生じるとは捉えていないと説明した。そのうえで、関連法令を踏まえて政治的中立性を確保しつつ、引き続き主権者教育に取り組んでほしいと求めた。
ノーベル賞に期待、基礎研究は3本柱で支援
翌週から始まるノーベル賞の発表について問われると、関大臣は、日本の優れた研究者がノーベル賞の受賞という形で世界的な評価を受けることは国の誇りだと語った。国民にとっても大きな励みになるという。
2025年には、ノーベル化学賞を北川進・京都大学理事・副学長、高等研究院特別教授が、ノーベル生理学・医学賞を坂口志文・大阪大学特別栄誉教授が受賞している。関大臣は、2人に続いて日本人の受賞者が発表されることを強く期待していると述べた。
基礎研究については、人類の発展の基盤となる貴重な知的資産を創造し、イノベーションの源泉を生み出すものだと位置づけた。そのうえで、基礎研究力の向上は喫緊の課題だとの認識を示した。
文部科学省の取り組みとして関大臣が挙げたのは3つだ。1つ目は、研究者の自由な発想に基づく研究を支える科学研究費助成事業(科研費)の大幅な拡充など、競争的研究費の充実である。2つ目には、継続的で安定的な教育研究活動を支える基盤的経費として、国立大学法人運営費交付金の大幅な拡充を示した。3つ目は、世界トップレベルの研究者が集まる国際的な研究拠点を形成する「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」の推進だ。今後も必要な政策を総動員し、基礎研究力のさらなる向上に取り組むとした。
東大総長選考、学内への説明求める
東京大学では9月28日、総長選考・監察会議が次期総長予定者として藤垣裕子教授(総合文化研究科)を選出した。記者は、教職員による意向投票で1位ではない候補者が選出される事例があり、投票した教員などから反発も起きていると指摘した。そのうえで、最終的な選考の基準や理由をより丁寧に説明する必要があるのではないかと尋ねた。
関大臣は、東京大学の総長選考・監察会議は今回なぜそのような判断をしたのかを学内にしっかりと説明する必要があると述べ、会議の対応を注視する考えを示した。
学長選考・監察会議による選考は、国立大学法人法に定められた仕組みだ。関大臣は、学内外の意見を反映するため、学内と学外の同数の委員で構成する同会議が選考を行うと説明した。そのうえで、選考理由や選考過程をしっかり説明することが、会議として説明責任を確実に果たすことにつながると強調した。文部科学省もこの点を重視するという。
今後への期待を問われた場面では、選考結果を受けてさまざまな過程を経る可能性があることから、もう少し状況を注視したいと述べるにとどめた。
コミュニティ・スクール導入は約65%
学校と地域の連携をめぐっては、コミュニティ・スクールに期待する役割と、導入拡大に向けた課題が問われた。コミュニティ・スクールとは、保護者や地域住民などが一定の権限と責任を持って学校運営に参画する「学校運営協議会」を置く学校のことだ。
記者はまず、中央教育審議会初等中等教育分科会学校安全部会で、第4次学校安全の推進に関する計画の策定に向けた議論が進んでいることを紹介した。2026年8月21日の諮問でも、コミュニティ・スクールの仕組みを活用し、家庭や関係機関と連携した対策を実行することが求められているという。一方で記者は、制度の創設から20年がたった今も、設置率が65%程度にとどまっていると指摘した。
関大臣によると、コミュニティ・スクールの設置は法律で努力義務とされており、2017年4月時点の導入数は全国の公立学校で3,600校だった。その後は着実に導入が進み、2025年5月時点では約65%の学校に導入されているという。なお、文部科学省の調査では、2025年5月1日現在の公立学校の導入校数は2万2,009校で、導入率は64.9%となっている。関大臣は、導入数は増加傾向にあるとした。
導入の成果としては、学校と保護者・地域住民の相互理解のほか、特色ある学校づくり、教育課程の改善・充実、学校安全や地域防災の取り組みが挙がっているという。関大臣は、学校と地域の連携・協働が進んでいる姿だと評価した。
関大臣は、2026年8月に取りまとめられた中央教育審議会生涯学習分科会の審議経過報告にも触れた。報告では、子供たちを取り巻く課題が多様化するなか、地域全体で子供の学びや成長を支える基盤として、コミュニティ・スクールのさらなる推進が求められているという。一方で関大臣は、地域間や学校種間の導入状況の差や、協議の形式化といった課題も生じていると述べた。
文部科学省は、導入促進と協議の実効性の向上に向けて、有識者による伴走支援を行う。あわせて、自治体におけるアドバイザー配置などの体制構築への支援や、全国フォーラムの開催や大臣表彰を通じた好事例の周知にも取り組む。関大臣は、コミュニティ・スクールの導入促進に引き続き取り組む考えを示した。
アジア大会、招致への影響「特段考えていない」
アジア競技大会の運営をめぐる質問も出た。記者によると、愛知・名古屋で開催中の第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)では、国歌の流し間違いや車両の手配ミスなどのトラブルが相次いでいる。選手団などから不満の声が上がっているとの報道もあるという。
記者は、文部科学省は大会を直接所管していないかもしれないが、大会開催の一部を負担している立場にあるとして、トラブルの受け止めと、今後の国際的なスポーツ大会の招致への影響を尋ねた。
関大臣は、大会運営をめぐりさまざまな批判の声があるとの報道は承知しているとしたうえで、選手が安心して競技に集中できる環境を確保することが重要だと述べた。公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会は、個々の事案の原因を検証するとともに、再発防止の徹底を図るなど、安全・安心で円滑な大会運営に向けた対応を進めているという。関大臣は、引き続き選手や関係者の声を丁寧に聞きながら、適切に対応してほしいと求めた。
今後の国際競技大会の招致などへの影響は、特段考えていないとした。文部科学省としても組織委員会とこまめにコミュニケーションを取り、大会運営に協力していく考えだ。
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