海外の最新トレンドから探る 教育におけるコーチングの可能性

企業や教育現場におけるコーチングの実践を通じて、 VUCA時代のコーチングの可能性を紐解く本連載。初回は欧米での導入事例を参考に、教育者のコーチング体験の重要性を考察する。

米国の教育現場における
コーチングの導入

岡田 裕介

岡田 裕介

株式会社THE COACH代表取締役
株式会社パーソルキャリアに入社。転職支援・採用コンサルティングに従事。その後、オルタナティブスクールを運営する教育系の一般社団法人を共同設立・副代表理事に就任。独立後は、認定プロフェッショナルコーチとして、スタートアップ企業の経営者・CxO・マネジメントクラスを中心にコーチングを提供。国際コーチング連盟認定コーチ(PCC)。

奥田 麻菜美

奥田 麻菜美

株式会社THE COACH所属教育研究者・ライフコーチ
オランダからの帰国子女で、アメリカンスクールで受けた授業が面白く教育の道を志す。慶應義塾大学法学部卒業後、人事コンサルタントとしての勤務を経て、放課後学習のプログラムディレクターとして中高生向けの自習室や探究講座を運営。現在ハーバード教育大学院の修士課程にてDeeper Learning(探究学習やプロジェクトベースドラーニングを含む21世紀型教育)について研究中。

2019年、米国のコーチングの市場規模は1兆6,000億円。日本と比較すると約50倍にものぼる。ビジネスやスポーツの領域の他、米国では教育現場でのコーチングも主流だ。2017年の米国の論文1では、校長の約50%がコーチングを受けている、または受けた経験があり、コーチと良い関係性を築けた校長は「コーチングを継続することが生徒の学力向上に貢献している」と回答した。

奥田 生徒の成績によって学校の予算が左右される州が米国には多くあります。つまり、生徒の成績や教師の質の向上は、学校を経営する校長にとって緊急の課題であり、そのためにコーチングが用いられています。他の論文では、校長がコーチングを受けたことで、“自分の手で学校をよりよくできる”という自己効力感の向上、また、校長としての自身の役割の理解につながったと回答しています。

他にも米国では“Instructional coaching”という言葉があり、先生が自分の授業の進め方についてフィードバックを受けるコーチングが行われている。コーチングは、ビジネスとスポーツ、教育、いずれの分野においても、目標達成に向けたプロセスを改善する手法として取り入れられてきたと言えるだろう。

さらに、注目すべきは目標達成のために始めたコーチングの継続が自己理解や自己内省へとつながる可能性があることだ。2009年のハーバード大学のビジネスレビュー2では、…

(※全文:2225文字 画像:あり)

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