特集2 未来を紡ぐ探究学習 興味関心を深め課題解決に挑む

次期学習指導要領の改訂に向けて中央教育審議会「教育課程企画特別部会」が2025年9月に公表した論点整理では「質の高い探究的な学びの実現」が検討事項の一つに挙げられている。その実現に向けて、いま必要な取組みは何か。企業や有識者への取材・寄稿などから検証する。

探究的な学びにおける
学校現場の課題

論点整理に基づき、教育課程部会「生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループ」(以下「WG」)において、「質の高い探究的な学びの実現」に向けた具体的な検討が進んでいる。WGでは、総合的な学習・探究の時間に関する「小中高に共通する課題」として、「インターネットから収集した情報を単に切り貼りしている事例、探究のプロセスを形式的に回し、学びが空洞化している事例も散見される」といった探究の目標や範囲に関わる課題、「カリキュラムの設計に困難を感じる等の声がある」「探究に関する校務分掌や伴走支援、地域の支援体制等が十分整備されておらず、特定の教師に負担が偏る傾向」といった教師の負担感に関わる課題などを指摘している。

また、全国の高校教員340名を対象にした認定特定非営利活動法人カタリバの調査では、探究学習の推進を担当している教員や生徒伴走にあたっている教員の約92%が、探究学習の推進に関して「課題を感じている」と回答した(「とても感じている」「まあ感じている」の合計)。また、課題だと感じていることの具体例として「授業案やカリキュラムの設計」が49.4%と最も高く、「調べ学習で終わってしまう」(49.1%)が続いている(図1)。

図1 探究学習の推進において、特に課題だと感じるのはどのようなことですか?

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WGでは高等学校固有の課題として「授業時間数には限りがある中、カリキュラムが過密であることもあり、学校外をフィールドにした大胆な取組が行いにくい」「校務分掌や伴走体制、地域資源の活用が必ずしも進んでいない中、一部の担当教員に大きな負担がかかっている例もある」などの課題も指摘されている。

こうした課題を踏まえて、WGにおける検討事項・論点には、「個々の児童生徒の思いや願い・好奇心に基づく探究の推進や、学校のカリキュラム設計の負担軽減、教職員の学びの機会の充実の在り方」「地域人材や企業等との連携の一層の推進に向けた方策」などが挙げられている。これらを踏まえると、学校の負担を軽減し、児童生徒の思いや願い・好奇心に基づく探究を推進する上で企業等との連携は解決策の一手と考えられる。NTT東日本は2022年から河合塾グループと連携し、探究学習を中心とする新たな教育モデルの開発を推進。2027年4月に開校予定の「ドルトンX学園高等学校」への参画や「NTTe-CityLabo」での探究学習プログラムなどを通じて、次世代リーダーの輩出をめざしている(➡こちらの記事)。

探究と情報の連携
探究学習を実質化する枠組み

論点整理では、質の高い探究的な学びの実現に向けた新たな枠組みとして、情報活用能力を各教科も含めた探究的な学びを支え、駆動させる基盤と位置付け、探究と情報の一層の連携について整理すべきとしている。例えば、小学校段階の検討事項では「情報の領域(仮称)」において、「探究的な学びの特質が十分に発揮される」ような学習の在り方。特に、情報の領域(仮称)と従来の総合における探究との関係性やそれらの具体的な在り方を挙げている。また、中学校・高校段階では、中学校「情報・技術科(仮称)」や高校情報科での学びの、総合における探究への効果的な活用の在り方を挙げている。

WGでこうした検討課題が挙げられている中、聖徳学園中学・高等学校校長補佐/データサイエンス部長のドゥラゴ英理花氏に、中等教育段階における探究学習を実質化するための枠組みとして、統計学的課題解決(PPDAC)サイクルに基づくデータサイエンス教育の意義について整理いただいた(➡こちらの記事)。

教科における探究的な授業
キャリア教育との接続を考える

探究的な学びは「総合的な学習(探究)の時間」を中心に議論されることが多いが、論点整理では「総合を中核としつつ各教科等も含めた形で探究的な学びを一層重視する」といった言及もされている。教科における探究的な授業の進め方について、千葉大学教授の小山義徳氏に寄稿いただいた(➡こちらの記事)。

また、探究的な学びにおいて「キャリア教育」の視点も重要だ。立命館宇治中学校・高等学校教諭の酒井淳氏には、総合的な探究の時間を核にした学校実践から、その意味について寄稿いただいた(➡こちらの記事)。

「総合的な学習の時間」創設から約30年が経過し、2022年度から高校で「総合的な探究の時間」が必修となって5年目を迎える。探究学習は子どもたちのどんな力を育んでいるのか。自ら問いを立て課題を解決する探究プログラム「マイプロジェクト」(探究学習)に取り組む高校生2,459名を対象にしたカタリバの調査では、探究学習を通じて身についた力として「主体性(81.9%)」が最も高く、「実行力(71.4%)」「課題発見力(63.1%)」と続く(図2)。

図2 マイプロジェクト/探究の経験を通して、具体的にどのような力が身についたと思いますか?(複数選択可)

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昨今の急速なAIの進化など、将来を正確に予測することは難しいが、探究学習によって身に付く力は、これからの時代を担う子どもたちにとって必要な力となるはずだ。質の高い探究的な学びの実現に向けて、本特集がそのヒントとなれば幸いだ。