ウェルビーイングのためのマネジメント 人間行動の背後にある要因を理解する

CSR が提唱され、個人・組織だけでなく社会にとっても利益になる経営が求められている。各ステークホルダーにとってのウェルビーイングを実現するマネジメントについて、組織行動学の観点で解説する。

個人、組織、社会… 広がるマネジメントの範疇

鈴木 竜太

鈴木 竜太

1971年生まれ。1994年神戸大学経営学部卒業。ノースカロライナ大客員研究員、静岡県立大学経営情報学部専任講師を経て、現在、神戸大学大学院経営学研究科教授。専門分野は経営組織論、組織行動論、経営管理論。著書に『組織と個人』(白桃書房、2002年:経営行動科学学会優秀研究賞)、『自律する組織人』(生産性出版、2007年)、『関わりあう職場のマネジメント』(有斐閣、2013年:日経・経済図書文化賞、組織学会高宮賞)、『経営組織論(はじめての経営学)』(東洋経済、2018年)、『組織行動─組織の中の人間行動を探る』(有斐閣、2019年)など。

ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念で、「幸福」と翻訳されることも多い言葉である。ウェルビーイングや幸福はかなり広く曖昧なものではあるが、現在の経営学では倫理や社会的規範など、自社の組織にとって直接的に利益となるような行動をマネジメントするだけでなく、社会にとってもそこで働く個人にとっても利益になる行動をマネジメントする必要性が大きくなっている。

近年、職場での鬱や過労死などが問題になり、また倫理の側面では不正や不祥事が定期的にニュースを賑わしている。いわゆるブラック企業といったラベルを貼られてしまうことは、人材が貴重になっていく中、企業組織にとっては…

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