行動科学に基づく人材育成と企業内大学・研修のあり方

人材育成には様々なアプローチがあるが、組織の中の人間行動を理解する組織行動論の観点からみるとどうだろうか。学びの場を設計し、「学ぶ」という行動を引き出す秘訣について考察する。

組織の中の3つの学びと、学びのトリガー

鈴木 竜太

鈴木 竜太

1971年生まれ。1994年神戸大学経営学部卒業。ノースカロライナ大客員研究員、静岡県立大学経営情報学部専任講師を経て、現在、神戸大学大学院経営学研究科教授。専門分野は経営組織論、組織行動論、経営管理論。著書に『組織と個人』(白桃書房、2002年:経営行動科学学会優秀研究賞)、『自律する組織人』(生産性出版、2007年)、『関わりあう職場のマネジメント』(有斐閣、2013年:日経・経済図書文化賞、組織学会高宮賞)、『経営組織論(はじめての経営学)』(東洋経済、2018年)、『組織行動─組織の中の人間行動を探る』(有斐閣、2019年)など。

組織の中の人間行動を理解する行動科学的な考え方に基づくと、人材育成や教育研修のあり方はどのように考えることができるだろうか。つまり、人材育成や教育研修の観点から考えると、組織の中の人々からどのような行動を引き出す必要があるだろうか。そのためには学ぶということや成長するということは一体どのようなことなのかを考える必要がある。

例えば、人の話をよく聞くということも学習上では重要な行動であるが、それだけでは十分な成長があるとは限らない。より良い成長のためには様々な行動を引き出す必要があり、それをもたらす教育のあり方でなければ、組織の中の人々の育成や成長はより良いものにはなっていかないのである。

私の専門とする組織行動論では、組織の中の学びにはおおよそ3つがあることが示されている。1つは伝聞やアドバイスによる学習…

(※全文:2817文字 画像:あり)

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