特集2 外部リソース活用、学校組織の作り方 探究学習のデザインと実践

学校現場で探究的な学びが進む中、「主体的な取り組みにならない」、「教材開発の負荷が大きい」といった声も聞かれる。本特集では、「探究学習のデザインと実践」をテーマに外部リソースを活用する意義や、探究学習をデザインし、実践する上で必要な知見などを探った。(編集部)

複雑で変化の早い現代社会で
必要な資質・能力を育む

複雑で変化の早い現代社会では、正解が一つではない問題に直面することが多く、「創造力」「問題解決能力」などの資質・能力がより求められている。児童・生徒が主体的・対話的で深い学びを通じて、「生きる力」を育むために、探究学習の意義は高まっており、学校では、「総合的な学習(探究)の時間」をはじめ、探究的な学びが進展している。

小学校の学習指導要領では「総合的な学習の時間」の目標は「探究的な見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,よりよく課題を解決し,自己の生き方を考えていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。」とし、以下の3つを掲げている。

⑴探究的な学習の過程において,課題の解決に必要な知識及び技能を身に付け,課題に関わる概念を形成し,探究的な学習のよさを理解するようにする。
⑵実社会や実生活の中から問いを見いだし,自分で課題を立て,情報を集め,整理・分析して,まとめ・表現することができるようにする。
⑶探究的な学習に主体的・協働的に取り組むとともに,互いのよさを生かしながら,積極的に社会に参画しようとする態度を養う。

また、学習指導要領では、探究的な学習を実現するための探究のプロセスとして、「①課題の設定→②情報の収集→③整理・分析→④まとめ・表現」を明示。こうした学習活動を発展的に繰り返していくことを重視してきた(図表1)。

図表1 探究的な学習における児童の学習の姿

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実際に学校現場では、どの様な探究学習が行われているのだろうか。

公益財団法人日立財団の「日立みらいイノベータープログラム」は、小学5年生が対象で、「総合的な学習の時間」に活用できる教材・日立グループからの講師派遣を無償で提供している (➡こちらの記事)。内容は「スキルトレーニング」(フェーズ1)と「探究学習」(フェーズ2)の2部構成で、2学期に約4か月かけて実施し、日立財団が全面的にサポートを行う。

フェーズ1は「未来をイノベートする力」の育成に必要な「7つのKeyスキル」を身につけるためのトレーニングを、「総合的な学習の時間」などで、繰り返し行っていく。

フェーズ2は「理想の学校」をテーマに自分たちで設定した学校の課題を、グループに分かれて探究学習に取り組む。2024年度に「総合的な学習の時間」の中でプログラムを実施した千葉県柏市立光ケ丘小学校。校長の荻村竜一氏と授業を担当した学年主任の江副雄太氏に、実際の取り組みや、児童の変化などについて話を伺った。

探究学習をデザインする上での
「問いの設定」や組織づくりの課題

高等学校の新学習指導要領により、「総合的な学習の時間」は「総合的な探究の時間」となった。3年が経過し、様々な課題も指摘されている。

東京学芸大学准教授の登本洋子氏は、「生徒の探究をサポートする学校側の体制に課題がみられることもあります」と話す(➡こちらの記事)。登本氏には、探究的な学びを支える組織づくりのポイントや、探究学習を進める上で、教員が持つべきマインドセットなどについて話を伺った。

文部科学省が2025年度の予算案で探究・文理横断・実践的な学びの推進に関する施策(図表2)や学校管理職マネジメント力強化推進事業(➡こちらの記事)を盛り込む一方、民間企業でも、学校現場の創造的で探究的な学びの実践を支援する動きがある。

図表2 探究・文理横断・実践的な学びの推進

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株式会社ウィル・シードは、米国の3500校で導入されている教育プログラム「WOZED(ウォズエド)」を日本向けにカスタマイズ、「AI」「データサイエンス」等の10コースを提供(➡こちらの記事)。導入校では実施の期間や学習者のレベルに合わせて、それらのコースを組み合わせ、柔軟にプログラムを設計できる。例えば「情報Ⅱ」の授業や「総合的な探究(学習)の時間」において、年間のプログラムとしてWO ZEDを活用できるほか、課外活動として数時間のプログラムで実施することもできる。

また、博士号教員である秋田県立秋田高等学校の遠藤金吾氏には、高校での探究活動におけるポイントとして、「テーマ設定」と「不正な行為への指導」について、寄稿いただいた(➡こちらの記事)。

本特集は「探究学習のデザインと実践」をテーマに、次世代を担う子どもたちに必要な資質・能力を育む学びを実現するために、いまどんな知見や取り組みが必要なのかを探った。教育関係者にとって、より充実した探究学習に取り組む一助となれば幸いだ。

複雑で変化の早い現代社会においては、主体的な学びを通して、次世代の「生きる力」として必要な資質・能力を育む探究学習が求められている。

photo by 婷婷 季 / Adobe Stock