差別・不平等解消の取り組みと、生きやすい社会づくり
多様性はいまや肯定的に活用されるべきものとして考えられるようになり、D&Iの推進が注目されている。本連載では、多様性を奨励する動きを批判的に検討しながら、誰もが生きやすい社会へと日本をひらいて 行くことに向けて、どのような視座、連帯、学びが求められるのかを考えてみたい。
多様性の時代
岩渕 功一
ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)という言葉を耳にしたことがない人は読者の中でどれくらいいるだろうか。インターネットで検索すれば800万を超えるサイトが出てきて、さまざまな企業、自治体、NGOなどによる取り組みを知ることができる。それほどこの言葉は社会において広く使われ、実践されている。その背景にあるのは多様性が創造性とイノベーションをもたらし、企業・組織・社会を豊かにするという発想である。元よりジェンダー、LGBTQ、障害、エスニシティ/人種、宗教、社会経済的な背景、年齢などに関する多様性はいかなる社会においても常に存在し続けてきた。しかし、個人の価値観が多様になり、国境を越える人の流動が活発となるなかで、社会における多様性はより可視化している。多様性の時代だとされ、多様性を尊重して包含する必要が叫ばれるとともに、多様性は肯定的に活用されるべきものとして考えられるようになり、D&Iの推進が注目されている。
多様性を否定的に捉えるのではなく、…
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