特集2 次期学習指導要領が描く未来 多様性の包摂・生成AI・情報活用能力
中央教育審議会の「論点整理」では、次期学習指導要領に向けた今後の検討の基盤となる基本的な考え方を示した。①深い学びの実装、②多様性の包摂、③実現可能性の確保と3つの方向性を提示している。本特集は論点整理からいくつかのテーマに焦点をあて学びの未来を展望する。
次期学習指導要領に向けた
検討の基盤となる考え方
「学習指導要領」とは、全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準のこと。
およそ10年に1度改訂されており、子どもたちの教科書や時間割は、これを基に作られている。
2025年9月25日、中央教育審議会教育課程企画特別部会が公表した「論点整理」では、次期学習指導要領に向けた今後の検討の基盤となる基本的な考え方について、主に以下のような整理をしている。
第1章では、生涯に渡って主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる、民主的で持続可能な社会の創り手を「みんな」で育くむため、①「主体的・対話的で深い学び」の実装、②多様性の包摂、③実現可能性の確保、の3つの方向性を踏まえて議論を行うとしている(図表1)。
3つの方向性の実現に向けて、子どもも大人も「みんなで支え合う」ことが重要だと奈良県公立中学校教諭の栗山泰幸氏は指摘する。栗山氏には今後の学校づくりに必要なことを寄稿いただいた(➡こちらの記事)。
デジタル学習基盤と生成AI
小中高での体系的な情報教育
論点整理の第2章では、デジタル学習基盤を前提とした学びの在り方が挙げられている。札幌国際大学准教授の安井政樹氏には、特に「生成AI」に焦点をあて、AIと協働し学びを複線化する実践などについて寄稿いただいた(➡こちらの記事)。
論点整理の第4章では、情報技術を自在に活用し、課題解決や探究ができるようにしつつ、デジタルの負の側面にもしっかり対応できるよう、情報活用能力の抜本的向上を図るとしている。このため、小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域(仮称)」を付加しつつ、中学校では情報技術に関連する内容を強化した「情報・技術科(仮称)」を新設。それらを踏まえた高等学校情報科の充実を図るとしている。
論点整理が情報教育に対して、小中高を通じて一貫した学びとして再構築する動きを本格化させている中、各学校段階で目指すべき内容の方向性等について、広島大学大学院特命助教の宮島衣瑛氏に寄稿いただいた(➡こちらの記事)。
多様性の包摂と学校づくり
主体的に社会参画する教育改善
3つの方向性にある「多様性の包摂」。論点整理の第3章では、多様な子供たちを包摂できる教育課程の実現に向け、標準授業時数の弾力化を可能とする義務教育段階の「調整授業時数制度」の創設(図表2)等や高等学校段階における教育課程の柔軟化、個別の児童生徒(不登校児童生徒、特定分野に特異な才能のある児童生徒、日本語指導が必要な児童生徒)に係る教育課程の編成・実施の仕組み(特別支援教育に関しては第7章で整理)を具体的な検討の方向性に挙げている。
多様なニーズをもつ子どもを前提に、いま学校全体で支える仕組みが求められている。そこで多層型支援システムやSWPBSを通じて「多様性の包摂」を学校づくりの土台に据える視点を白梅学園大学の前川圭一郎氏に寄稿いただいた(➡こちらの記事)。
論点整理の第7章では、その他諮問で提起された事項の在り方として、以下の6つが挙げられている。
①カリキュラム・マネジメントの在り方
②高等学校入学者選抜
③産業教育
④特別支援教育
⑤幼児教育
⑥子供のより主体的な社会参画に関わる教育の改善
最後の⑥は、特別活動において児童生徒が主体となってルールの形成や学校生活の改善に関わるようにするなど、子供が主体的に社会参画するための教育を充実させることが狙いだ。取組を促進する方策の充実として、子供の意見を反映させる受け皿の整備などが盛り込まれている。論点整理でも子どもの社会参画の推進が改めて明確になった中、学校や地域が子どもの声を活かし、共に学びの場や社会環境を創ることが目指されている。筑波大学助教の古田雄一氏に、その意義と現場に求められる対応など話を聞いた(➡こちらの記事)。
今後は、第1章から第7章で明らかとなった課題等を踏まえて総則・評価特別部会や各WGで検討を進め、遅くとも2026年夏頃までに取りまとめを行い、同年度中に中央教育審議会として「答申」が取りまとめられるよう、検討を進めていく予定だ。自らの人生を舵取りする力と民主的な社会の創り手育成に向けて今後の議論を注視したい。

