哲学的思考がいざなう、日常の底にある不可思議な安らぎ

小難しく、とっつきづらいイメージがぬぐえない哲学。しかし高校の新科目「公共」では、哲学倫理が教えられることになる。哲学が私たちの生活にもたらしてくれるものとは……?

一ノ瀬 正樹

一ノ瀬 正樹

東京大学卒。東京大学名誉教授(哲学講座)。2018年4月より現職。オックスフォード大学名誉フェロー。日本哲学会会長。著書に『死の所有』(東京大学出版会、2011年)、論文に『Normativity,probability,and meta-vagueness』(Synthese[2017]194:10)などがある。

「なぜその椅子に座っても大丈夫だと思ったのですか」。私はときどき学生にこう問いかける。つまり、椅子に座るとき、その椅子が自分の体重を支えられると思ったから座ったはずだが、なぜ自分の体重を支えられると思ったのか、その根拠は何ですか、という問いかけである。

大抵の学生はそんな疑問など抱いたことがなく、きょとんとしてしまう。そして、頑丈な材質なので、などと答える。けれど私はたたみかける…

(※全文:2209文字 画像:あり)

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