目に見えない脅威との共存 闇雲な恐怖心を解放する視点とは

コロナ禍で死生観や意思決定が変容している。今、教育者が持つべき視点は何だろうか。哲学的観点から専門家が解説する連載第1回は、ウイルスと放射線への適切な対応について比較・考察する。

脅威に対する前提

一ノ瀬 正樹

一ノ瀬 正樹

東京大学卒。東京大学名誉教授(哲学講座)。2018年4月より現職。オックスフォード大学名誉フェロー。日本哲学会会長。著書に『死の所有』(東京大学出版会、2011年)、論文に『Normativity,probability,and meta-vagueness』(Synthese[2017]194:10)などがある。

新型コロナウイルスによる感染症はなかなか終息の予知を見せない状況だが、同じく目に見えない脅威といえば、2011年3月に発生した福島の原発事故の放射線問題も記憶に新しい。放射線被ばく問題を研究してきた武蔵野大学の一ノ瀬正樹教授は、「目に見えないものを闇雲に怖がるのではなく、きちんとした知識を得ようと努めることが重要だ」と語った。

まず、新型コロナウイルスは「SARS-CoV-2」という SARS の一種だ。そしてコロナウイルスには様々な種類があり…

(※全文:2254文字 画像:あり)

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