量子力学 ―「モノ」でなく「コト」を表すミクロの世界の理論とは

「量子コンピュータ」や「量子暗号」など、量子力学を情報科学に応用することで、情報技術は大きな革新を遂げることが期待されている。量子情報技術を専門とする富田章久氏による解説シリーズの第1回では、基礎となる量子力学とは何か、その成立過程を知る。

量子って何?

富田 章久

富田 章久

北海道大学大学院情報科学研究院教授。
1984年東京大学大学院理学系研究科修士了、1998年博士(工学)東京大学。日本電気株式会社を経て、2010年より現職。この間、JST ERATO今井量子計算機構プロジェクト、ERATO-SORST量子情報システムアーキテクチャプロジェクトで量子情報実験グループリーダーを兼務。専門は量子情報技術。著書に『量子情報工学』(森北出版)。

最近ニュースなどで「量子コンピュータ」や「量子暗号」が話題になることが増えている。昨年12月の岸田首相の所信表明演説でも人工知能・ライフサイエンス・宇宙・海洋と並んで量子が世界の未来にとって不可欠な分野として言及されている。量子技術は情報社会を変革していくものとして期待されている。

とはいうものの、「量子」はあまり耳慣れた言葉ではない。電子、陽子や中性子は物質を作っている小さなものとして知られている。それに対して量子はモノではなくコト、ミクロの世界でのふるまい方を表している。では、なぜコトなのに「子」というモノのような名前がついているのだろうか。量子が導入されたのは、エネルギーがある大きさを単位として…

(※全文:2407文字 画像:あり)

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