未来の産業基盤・量子情報科学のリカレント教育と導入教育をどう進めるか

次世代の情報技術基盤として日本が世界を牽引するポテンシャルをもつ量子情報領域。最終回となる今回は、前回に引き続き人材育成について、異分野からの参入を促進するための教育プログラムとアウトリーチのあり方を考察する。

前回に引き続き人材育成について考えたい。今回は異分野からの参入を促進するための教育プログラムと、専門教育以前での量子情報科学の導入も検討したい。もとより、筆者は初中等教育やアウトリーチの専門家ではないので量子技術の側で思うことを書かせていただき、実際に教育に携わっている方々のご批判やできればご協力をお願いしたい。

量子情報領域のリカレント教育

富田 章久

富田 章久

北海道大学大学院情報科学研究院教授。
1984年東京大学大学院理学系研究科修士了、1998年博士(工学)東京大学。日本電気株式会社を経て、2010年より現職。この間、JST ERATO今井量子計算機構プロジェクト、ERATO-SORST量子情報システムアーキテクチャプロジェクトで量子情報実験グループリーダーを兼務。専門は量子情報技術。著書に『量子情報工学』(森北出版)。

ビジネスを量子情報技術によって質的に変革し、付加価値を増大させた量子産業を創り出していくことが、将来の競争力維持や安全保障にとって重要であることが指摘されている。

このためには、量子情報技術とは異なる分野の専門家との協業が必要であり、異分野からの人材の参入を促すことが重要である。しかし、異分野からの参入は進んでいるとは言い難い。それは量子技術の可能性への関心はあっても、量子力学を学ぶ機会のなかった多くの社会人にとって参入への障壁が高いことが一因であろう。また、これまでそれぞれのビジネスにおける量子技術の活用シーンが示されていないため、…

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