子ども観、教師観を変える 『教える』から『信じて寄りそう』教育へ

新学習指導要領では、〈知識の詰め込み〉から〈知識を使いこなす力〉を育てる教育に指導ポイントが大きく変わる。新学習指導要領が求める『資質・能力の育成』『主体的・対話的で深い学び』とはどのような学びなのか。新学習指導要領の策定にもかかわった上智大学の奈須正裕教授に聞く。

有能さを伸ばす教育

──新学習指導要領の求める「資質・能力の育成」や「主体的・対話的で深い学び」が、これからの社会でなぜ必要なのか。改めてお聞かせください。

奈須 正裕

奈須 正裕

上智大学総合人間科学部教育学科教授
博士(教育学)。1961年徳島県生まれ。徳島大学教育学部卒、東京学芸大学大学院、東京大学大学院修了。神奈川大学助教授、国立教育研究所室長、立教大学教授などを経て現職。中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会委員。主な著書に『次代の学びを創る知恵とワザ』(ぎょうせい)など。

資質・能力という言葉は、もともと英語の Competency(コンピテンシー)の訳語で「有能さ」という意味です。人生は問題解決の連続ですが、様々な問題に出会った時に、上手に乗り越えていく力が、コンピテンシー。教育は広い意味での「有能さ」を育てると考えればいいという思想です。

一方で、これまでの伝統的な学校教育が「有能さ」を伸ばしてきたかと考えると、必ずしも伸ばしてはいないというのが結論です。膨大な知識や技能を教え込みますが、知識や技能は「有能に」問題解決する際の武器や道具、材料にすぎず、たくさん持っていても、それを上手く使いこなせなければ意味がない。いわゆる宝の持ち腐れです。「持っている宝は全部…

(※全文:4545文字 画像:あり)

全文を読むには有料プランへのご登録が必要です。