医療福祉系大学の作業療法士養成・実習教育へのF-SOAIP導入

F-SOAIPは保健・医療・福祉・教育等対人支援の多職種で共用できる経過記録法として注目される。医療福祉専門職養成大学で関連施設とともにIPE、特に実習教育から取り組む意義は大きい。

F-SOAIP(生活支援記録法)とは
多職種協働によるミクロ・メゾ・マクロレベルの実践過程において、生活モデルの観点から、当事者ニーズや観察、支援の根拠、働きかけと当事者の反応等を、F-SOAIPの項目で可視化し、PDCAサイクルに多面的効果を生むリフレクティブな経過記録の方法

Focus(着眼点):ニーズ、気がかり等。タイトルのように場面を簡潔に表現。支援計画の目標・課題など。
Subjective Data(主観的情報):当事者等の言葉。キーパーソンの場合、S(関係や綴柄)と表記。
Objective Data(客観的情報):観察情報、状態、他職種から得られた情報、状況・環境・経過等。
Assessment(アセスメント):支援者(記録者本人)の判断・解釈。気づきや考えを記載。
Intervention/ Implementation(介入・実施):支援者(記録者本人)の対応。支援、声かけ、連絡調整。
Plan(計画):当面の対応予定。

好循環の例:6項目で多職職の実践過程を可視化できる➡書く・読む・実践がリフレクションとなるため、これらの能力が向上➡最優先すべき児童らのニーズ等に基づいたポイントをおさえた記録となり、時間も短縮できる➡データ分析やAIに活用でき課題解決に資する➡新たな教材・教育アプローチ・働き方改革にもつながる。

臨床実習での学生記録の問題点

藤本 幹

藤本 幹

国際医療福祉大学 保健医療学部 作業療法学科 教授
作業療法士。博士(保健医療学)。主な専門分野は、作業療法学分野、医療福祉教育・管理学分野
連絡先:fujimoto@iuhw.ac.jp

本学、作業療法学科では、臨床実習での学生の経験記録(記録)に、F-SOAIPを導入した。その成果と課題について報告する。

OT養成課程の臨床実習では、臨床参加型実習(Clinical Clark Ship; CCS)が推奨されている。CCSは臨床教育者(Clinical Educator; CE)の通常業務に学生を参加させ、学生の経験値に応じて役割を担わせる実習形態である。CCSの利点は、学生のできることから支援に関わらせ、経験を積ませることが挙げられる。

臨床実習の手引き(日本作業療法士協会2022)では、問題指向型診療録であるSOAPを用いた記録が推奨されている。SOAPは医療的根拠を臨床チームで共有できる記録法であるが、OTの目的は生活行為の改善であること、介入中にも情報収集、アセスメント、再介入を繰り返す臨床思考も多く、本学では叙述型式の記録を用いていた。

F-SOAIPを
記録に導入した目的

本学は、臨床実習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ、総合実習Ⅰ・Ⅱ、地域実習を、学年毎に設定している。この度2年次(2023年後期)にF-SOAIPを演習し、3年次(2024年前期)の臨床実習ⅢからF-SOAIPを記録に導入した。臨地は、身体障害、精神障害、発達期、老年期、就労支援の領域の内3カ所を5日間参加する。主にOT評価のCCSを目的とした実習である。

(※全文:3590文字 画像:あり)

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