渋沢栄一 各国の歴訪を通して、ビジネスパーソンに必要な能力を洞察
渋沢栄一が日本社会に必要な人材育成として、どんな能力や心持ちを身につけた担い手であるべきと考えていたかを、今後の連載で順に紹介していきたい。まずはじめに国際性から検討していこう。
100年経った今も色あせない、世界を見据えた洞察力と人材育成にかける情熱がうかがい知れる。
6度の海外渡航
欧米での見聞を国内に
島田 昌和
渋沢自身は若いころ、フランスを中心にヨーロッパに約1年間滞在した経験を持つ。もちろん、そこで見聞きした西欧先進国の知見が、その後の彼自身の土台になっていることは間違いない。しかし、少し後に続く財閥のエリート経営者たちの多くは、慶應義塾に学び5年前後の長い間、主にアメリカに留学し、国際水準の近代的な教育を身につけていた。英語を自由に操り、経済や法律、理工系技術といった近代知を身につけた経営者もいる中、見方によっては彼らを上回る国際感覚と行動力を持っていたのが渋沢であった。
渋沢の国際性の一つ目は、若き日の渡仏以降、生涯6度の海外渡航をしていることである。ヨーロッパにもう1度、アメリカが4回、中国、韓国がそれぞれに1回であった(1902年に1回で欧米を回っている)。それらは何と60~80歳代の高齢時に出かけている。渋沢は若くして…
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