渋沢栄一流・社会的ネットワーク形成術
数多の経営者と協力し、数多くの会社立ち上げ・運営を進めてきた渋沢栄一。同時進行する幾多の事業の進行を支えたのが、共に困難に挑んだ経営者たちの存在である。経営者との関係構築や後進育成による社会的ネットワークの形成について取り上げる。
「閥」に属さず
数多の経営者たちと関係を築く
島田 昌和
たくさんの社会的資源を持つ人ほど、社会的地位を上昇できるという考え方がある。社会的資源には、資産などの物的資源、人脈などの人的資源、知能や学歴などの情報的資源、地位や権力などの関係的資源に大別される(詳しくは、拙著「渋沢栄一の青少年期~人間形成理論を利用して」『月刊資本市場』第425号、2021年1月参照)。
渋沢栄一はこれらの大半を手にしていた。地位や権力は途中で手放しているわけだが、私は人的資源づくりの達人だったことが彼の社会的地位を形成していたように考えている。出自は農民で、旧幕臣系列であった。薩長閥、財閥、学閥といった「閥」のメンバーであることに社会的なポジションが大きく左右された戦前日本にあって、それらと距離を置いて、経済界を中心に政治や社会全般、教育などありとあらゆる分野で多くの実績を残すことができたのはどうしてであろうか。
公平性、公共性、計数能力の高さ、視野の広さ、…
(※全文:2491文字 画像:あり)
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