ダイバーシティ&インクルージョン 多様性とは何か

D&I の推進が叫ばれるが、障壁も多くなかなか進まないのが現実だ。古い考えから抜け出すためには何が必要なのか、何のために D&I を推進するのか、そもそも多様性とは何か──。哲学的思考実験を通して考察する。

進まない D&I 日本社会をアップデートするために

岡本 裕一朗

岡本 裕一朗

玉川大学 客員教授
1954年、福岡県生まれ。九州大学大学院博士課程単位取得満期退学(哲学・倫理学)。博士(文学)。玉川大学名誉教授。哲学の諸問題を、幅広い観点から領域横断的に研究している。思考実験を使った哲学入門書として、2019年発行の『哲学の世界へようこそ。』(ポプラ社)、また近著として『哲学と人類』(文藝春秋社)など。

かつて社会では、組織を形成するとき原則になるのは「画一性と排除」だと思われていた。共通の資格、一定の能力をもつ者だけが集団に参入でき、そうした基準を満たさなければ厳しく排除された。歴史的に見ると、こうしたシステムは近代社会に特有のもので、今日ではその終わりも見え始めている。とすれば、それに代わる新たな原理が必要なのではないか。それが「ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂)」である。

はたして日本で、こうした転換はスムーズに進んでいるのだろうか。たとえば、会社の管理職や…

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