変わる評価法 知識詰め込み型から思考力養成型へ

旧来の知識を詰め込む教育では一律の客観評価が可能だったが、近年重要視されている思考力については、適切な評価法が確立しているとは言えない。学習の評価にあたって問い直すべきことを、哲学的観点で考察する。

知識詰め込み型の、教育と評価の終焉

岡本 裕一朗

岡本 裕一朗

玉川大学 客員教授
1954年、福岡県生まれ。九州大学大学院博士課程単位取得満期退学(哲学・倫理学)。博士(文学)。玉川大学名誉教授。哲学の諸問題を、幅広い観点から領域横断的に研究している。思考実験を使った哲学入門書として、2019年発行の『哲学の世界へようこそ。』(ポプラ社)、また近著として『哲学と人類』(文藝春秋社)など。

人の能力を評価するのは、簡単そうに見えてじっさいには難しい。とくに、大勢の人を短時間で判定するときはそうだ。そのため、入社試験では、第〇次選考まで行われ、念には念を入れてチェックされる。それでも、後になって評価の間違いに気づくこともある。

同じような状況は、研究者予備軍である大学院生の資質を評価するときも、起こってくる。研究者なら論文で判定できそうだが、じつはそれをどう評価するかで意見が分かれるのだ。たとえば、ある教授が Aさんの論文を絶賛するのに、別の教授は酷評することもある。とりわけ大胆な論文ほど…

(※全文:2402文字 画像:あり)

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