1人1台端末時代の、大型提示装置を用いた視覚的な授業とは

文部科学省や総務省の調査では、電子黒板は児童生徒の「関心・意欲・態度」を高める効果があるとされている。大型提示装置の効果的な活用について、東京学芸大学の加藤直樹准教授に聞いた。

1人1台端末で、大型提示装置の設置が基本に

加藤直樹氏

加藤直樹氏

(東京学芸大学 ICT センター教育情報化研究チーム 准教授)

GIGA スクール構想で、今年度内には小・中学校における1人1台端末環境整備の目途が立ち、2021年4月からはデジタル教科書・教材も本格的に活用され始める予定だ。

東京学芸大学 ICT センター教育情報化研究チームの加藤直樹准教授は「1人1台端末でデジタル教科書等を上手く活用すると、先生の問いかけに対し、子ども自身が作業したり考えたりする時間が増え、自然と授業が子ども主体になっていきます。『主体的で対話的』なアクティブラーニングにもっていくには、従来の黒板と紙の授業よりもうまくいくかと思います」と話す。

「端末が整備されて子ども主体の授業になっても、問いかけや中間、まとめといったアクセントポイントは必ず先生に戻ります。子どもたちが考えて書いたものもデジタルデータになっているので、大型提示装置は様々な場面で使うことになるかと思います。1人1台端末のもとでの子ども主体の授業において、大型提示装置は重要な ICT 機器の1つだと思っています」

電子黒板の2つの優位性

大型提示装置の効果的な使い方としては「とにかく表示すること」だと言う。特に視覚優位な子どもたちには、言葉だけではなく、見せたいもの、伝えたいものを表示し、視覚に訴える授業をすることが効果的だ。また、「使わない時には消す」ことも大切。必要のない時に表示しっぱなしにしていると、子どもの注意が画面に行き、集中力が散漫になる。

「大型提示装置の中でも、私が推すのは電子黒板です。電子黒板は表示画面に直接書き込むことができます。先生が書いたもののそばに立って、もしくは書き込みながら指導するのは効果的で、そういう意味では、黒板の効果的な使い方をそのままシフトできる大型提示装置としての電子黒板は使いやすく、効果も高いと言えます」

また、記録できるというデジタルならではの機能を活用することも大切。

例えば、動画を見せながら一時停止して書き込みをする。すると、授業の最後のまとめの時には書き込んだ数枚のスライドとして使うことができる。その場で書き込める電子黒板は、授業しながら教材を作ることもできるのだ。「黒板とは全く違うデジタルならではの使い方ができますので、よく理解して工夫して使うとその効果が飛躍的に向上します」

大型提示装置をはじめ ICT 環境を導入する際には、教育と ICT に通じている人が入って整備する必要がある。機器は導入したものの、「教室で使う教材を職員室で作ることができない」「授業ごとの大型提示装置と教師用 PC の接続が面倒」など、問題が発生することは多い。データや利用の流れを考えて環境作りをすることが大事だ。

「電子黒板用に PC を設置するのも1つの方法です」と加藤氏。そうすることで接続や読み込みの手間を省くことができる。

「1人1台端末に関して、子どもはすぐに慣れるので、先生はあまり構えず使う機会を増やしてあげて欲しい。デジタル教材や大型提示装置は上手く使えば必ずいい効果は出ますので、積極的に活用して欲しいと思います」

"端末整備から活用・実践の時代へ" の関連記事

電子黒板とウルトラコンパクトPCで、集中力の切れない授業を[AD]