データ分析の「要」は標準偏差にあり

目の前に突き付けられた数値を見ても、判断に困る場面はしばしばある。平均値と照らし合わせても判然としないのは、データの散らばりを考慮していないことが原因だ。統計学的根拠に基づく客観的な判断をするための標準偏差について解説する。

散らばりを知ることの重要性

倉田 博史

倉田 博史

東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 教授。
1996年一橋大学大学院経済学研究科理論経済学及び統計学専攻博士後期課程修了、博士(経済学)。山口大学経済学部助教授を経て現職。専門は統計学。著書に"Generalized Least Squares"(John Wiley and Sons)、「大学4年間の統計学を10時間でざっと学べる」(KADOKAWA)など。

例えば、皆さんのお子さんが食卓で、今日返却された期末試験の英語の得点が100点満点中92点だったことを「すごいでしょ」と誇らしげに報告してきたとする。これにどう応じればよいだろうか。我が子の努力を褒めてあげるのは当然としても、褒め方が過大にも過小にもならないようにしたい。客観的に92点はどれくらい「すごい」のか。

すぐに反応が出てこない親にしびれを切らした子供が「学年の平均点は50点だってさ」と付け加えたとする。我が子は平均点を92-50=42点も上回っている。立派なことは確かであるが、どれくらい「すごい」かについて未だはっきりしないのも確かである。この「はっきりしなさ」は…

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