産官学連携に不可欠な人材を育成 地域プロジェクトマネージャー養成課程

社会構想大学院大学の「地域プロジェクトマネージャー養成課程」は、地域活性化などのプロジェクトを計画・運営する際に様々な利害関係者の架け橋となり、プロジェクト全体をマネジメントできる「ブリッジ人材」の育成を目的に、最新の知識やノウハウを提供している。

日本の地域社会は、急速な人口減少・人口流出などに伴い多くの課題を抱えている。現代社会で地域の特性や強みを十分に生かした活性化策の実現には、企業や大学など各種団体、地域住民、外部の専門人材をはじめとした様々な主体を巻き込む産官学連携によるプロジェクトの遂行が不可欠だ。

一方、行政と民間の違いなど産官学連携のプロジェクトに関わる組織や人々の様々な差異を理解し、各主体をつなぎ、価値を最大化できる人材は不足している。

政府は地方自治体の都市部人材・専門人材任用の支援を展開。2021年度から地域活性化プロジェクトの推進を担う「地域プロジェクトマネージャー」の全国的拡充に向けた施策を打ち出している。

社会構想大学院大学の「地域プロジェクトマネージャー養成課程」(以下「本課程」)は地方自治体の現役職員や経験者、地域活性化や産官学連携を実践する専門家が、地方自治体の仕組みや考え方、地域活性化や産官学連携の方法や事例などについて、最新の知識やノウハウを提供。また、地方自治体に政策提言を行う機会を設けるなど地域活性化に取り組みたい人材に必要な理論と技術を提供している。

自治体の首長や担当者を招き
地域の課題に政策提言を実践

2025年3月17日には、静岡県富士市をフィールドとした第7期生による最終発表会が開催された。富士市からは小長井義正市長をはじめ4名の職員が来校し、研究員の政策提言に真剣に耳を傾けた。

富士市からは人口流出抑制のためのシビックプライド向上や移住定住施策、富士山を活かした誘客の推進と観光資源の活用などの課題が示された。研究員はインターナショナルスクールの富士市への招致、滞在型サイクルツーリズム活性化プロジェクトなど、同市の地の利や富士山の麓に位置する観光資源を活かした提案が目立ち、小長井市長からは「すぐにでも実装したい提案が多かった」といった評価を受けた。職員からも「研究員の中から実際に富士市に貢献してほしい」といった声が寄せられた。

翌18日は、和歌山県紀美野町をフィールドに全国から集まった研究員が地域の課題解決や魅力発信に向けた政策提言を行った。

紀美野町からの課題は2040年の目標人口を達成するための施策提案。研究員からは地域と人を結ぶ多機能施設、子育て訪問支援員制度など多様な解決策が提示された。特に、中高生への探究教育、学びの居場所づくりなど教育関係の提言が目立った。小川裕康町長や職員からは「具体性が高く、すぐに実装が見込める施策も多かった」といった評価が寄せられた。発表後の交流会では活発な意見が交わされ、提言の一部は既存事業との連携も視野に検討され始めている。

本連載は、本課程の研究員に焦点を当て、学びの目的、本課程で得た学び、キャリア形成や修了後の実践などを紹介していきたい。

本課程の日程等:約4か月間、1週あたり90分の授業を2コマ行う(授業は原則火曜日。授業時間は18:30~21:30)。授業は対面またはオンライン(政策提言の中間発表、最終発表含めて完全オンラインの参加も可能)。講習料は350,000円(非課税)。ただし、教育訓練給付金制度の利用で修了者は費用の40%を雇用保険から受給できる。