地方創生への活動を〈複業〉に 学びを活かし伴走型の地域支援を
社会構想大学院大学の「地域プロジェクトマネージャー養成課程」第2期修了生の藤原大介氏は、受講中の同期との縁がきっかけで、本業の傍ら、埼玉県北部の小鹿野町で地域活性化に尽力。活躍の場を広げている。受講のきっかけや現在の活動、今後の展望など話を聞いた。
スキルの幅、活躍の幅を広げ
第2、第3の故郷を作る

藤原 大介
通信事業会社 プロジェクトマネージャー
1980年生まれ、埼玉県狭山市出身。大学卒業後、運送会社に就職。Web制作系専門学校を経て、広告代理店にて広告プランナー担当後、2007年から現職。法人事業ではグループ各社・大手企業を対象にWeb制作や株主総会のネット中継などのソリューション営業を経験。また個人向け接続事業ではWebマーケティング全般(調査・分析・企画立案・設計・運用改善)、会員制度の新規構築やポイントシステム再編、社内プロジェクトマネージャーとして大型プロジェクトを複数担当。社会構想大学院大学「地域プロジェクトマネージャー養成課程」第2期修了生。 連絡先:daisukef56@gmail.com
「地域プロジェクトマネージャー養成課程」(以下「本課程」)では、地域活性へ向けた産官学連携プロジェクトを計画・運営する際に、様々な利害関係者の「架け橋」となり、プロジェクト全体をマネジメントする「ブリッジ人材」を育成する。
本課程は、地方自治体の現役職員や経験者、地域活性化や産官学連携を実践する専門家が、通常学習する機会の少ない「行政視点」を多く取り入れながら、地方自治体の考え方、地域活性化や産官学連携の手法・事例などについて、リアルかつ現在進行形の知識・スキルを提供。また、地方自治体に政策提言を行う機会も設けている。
藤原氏は通信事業会社に所属、社内のプロジェクトマネージャーとして顧客向けサービスの企画立案、設計、運用改善などを担当してきた。Web検索で偶然見つけた「地域プロジェクトマネージャー」の言葉に興味を持ったのが、本課程受講のきっかけだった。
「自分のスキルや活躍の幅を広げたいと考えていました。それに説明会での『第2、第3の故郷を作る』という言葉に惹かれました。また、異業種交流で新たな人脈を作る機会にもなると思い、受講を決めました」
民間企業のキャリアを辿ってきた藤原氏にとって、本課程の学びは、自治体における考え方などを一から学ぶ、良い機会となったと話す。
「営利目的ではない自治体に対して、民間の感覚は、そのままでは通じないことを学びました。実際に、政策提言に向けた企画調査で市役所を訪問した際、DXの切り口でデータの重要性を説明するも、あまり理解されず、感覚の違いを痛感しました」
和歌山県橋本市へ行った政策提言では『はしもとDX』をテーマに、オープンデータを活用した防災や行政サービスの効率化、堅い印象の市役所にエンタメ要素を盛り込んだWebコンテンツによる関係人口の創出などを提案した。
「政策提言では職員の方にも、データの重要性を理解していただいたと手ごたえを感じました」
講義では「各講師の方が過去に実践した事例の1つひとつが、リアルな体験でかつ非公開なネタもあり、とても参考になった」という。
「特に牧瀬稔先生との出会いは大きかったです。地域づくりの専門家であり、ユーモアもあり、知見の深さに感銘を受けました。たくさんの質問にも、丁寧に対応いただきました」
本課程の縁がきっかけで
広がる活躍の場
2020年の本課程修了後、2023年から埼玉県秩父郡小鹿野町で「特定地域づくり事業協同組合」専門員として活動。小鹿野町との縁は、本課程の同期である多々良氏との出会いがきっかけ。多々良氏とは、対面授業で出会い、すぐに意気投合。同氏が小鹿野町とのネットワークを持っていたことから、取り組みにジョインする形になった。埼玉県では2022年7月に、人口急減地域特定地域づくり推進法※に基づき小鹿野町において県内初となる「特定地域づくり事業協同組合」を認定した。小鹿野町は同制度を活用し、地域の担い手不足解消や地域経済の活性化へ向けた取り組みを行っている。
藤原氏は、同協同組合や組合員の公式ホームページのリニューアル制作支援、生中継で地域事業者の商品・サービスの紹介をスマホで配信できるライブコマースの撮影・配信支援などを手がけた。
2023年8月に、小鹿野町の森真太郎町長から「中小企業基盤高度化支援事業アドバイザー(都市ICT人材専門員)」に任命。「特定地域づくり事業協同組合」の専門員として、正式に起用された。小鹿野町と災害時の連携協定を結ぶ渋谷区笹塚仲町会の「笹塚祭り」への小鹿野町産品の販売支援なども手がけ、本業以外での活動の幅を着実に広げている。

写真左から笹塚仲町会の保倉豊氏、小鹿野町長の森真太郎氏、秩父ワインの村田道子氏、藤原大介氏。
50歳までに新たな事業を
地方創生は、継続が重要
藤原氏は10年ほど前から副業を行い、2020年頃からはITスキルを活かしたコンサルティングをスポットで引き受けてきた。現在45歳だが50歳までには新たな事業を起こすことを目指しているという。
「ライブコマースは他の地域でもできますし、インバウンドも見据えた翻訳業務やWebマーケティング支援など、地域や地域事業者に寄り添い、自走までの伴走支援を行うような会社の起業を構想しています。私自身も前向きに楽しみながら、サブ的な『副』業ではなく『複』業として本業とパラレルに地域活性化に向けた活動をしていきたいですね」
本課程での縁が現在の活動に結びついている藤原氏。
「本課程は多様な人が集まる場で、その場自体に価値があると思っています。刺激しあえる人たちが周りに増えることが、自身にとってもプラスになると思います」
※地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業推進に関する法律