働き方改革の前に知っておきたい睡眠学のススメ

心身の健康や仕事のパフォーマンスに悪影響をもたらす睡眠負債。今、日本社会に大切なことは、一人一人が休養感のある十分な睡眠時間を確保すること。そのために必要な知識や工夫を紹介する。

日本人の睡眠負債

駒田 陽子

駒田 陽子

東京科学大学 リベラルアーツ研究教育院 教授
日本睡眠学会 幹事、日本時間生物学会 理事
著書に『子どもの睡眠ガイドブック』(朝倉書店)、『基礎講座 睡眠改善学』(ゆまに書房)、『学術会議叢書23 子どもの健康を育むために-医療と教育のギャップを克服する』(日本学術協力財団)など。

みなさんは睡眠時間を十分に確保できていますか。胸を張って「確保できている」、「自分の睡眠に満足している」と答えられる方は残念ながら多くないようです。厚生労働省 国民健康・栄養調査によると、30~50 歳代の働き盛り世代では、睡眠時間7時間未満の割合が約8割、6時間未満の割合は約半数にのぼります。国際的にも日本人の睡眠時間の短さが問題視されており、OECD諸国の平均値と比べて約1時間短いことが明らかにされています。

睡眠に関する実験や疫学調査の結果から、成人に必要な睡眠時間は7~9時間であると考えられています。厚生労働省が発表した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は6時間以上を目安として必要睡眠時間を確保するよう推奨しています。私たちはつい、日常的に30分~1時間程度の睡眠不足は気合いで乗り切れると考えてしまいがちですが、少しの睡眠不足であっても数日にわたって繰り返されると、本人が自覚しないまま心身の健康や日中のパフォーマンスに悪影響が生じます。これを睡眠負債と呼びます。

(※全文:2502文字 画像:あり)

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