世界標準の「ジョブ型人事」はリスキリングへの意欲を高める

「世界の現実」をより深く理解することは、自社の課題や方向性を戦略的に考えるきっかけとなる。人事に関する国際比較研究に取り組む青山学院大学大学院・須田敏子教授に、海外におけるジョブ型人事の実態や、賃金制度やリスキリングに及ぼす影響について話を聞いた。

日本とは異なる
人事に関する「世界の現実」

須田 敏子

須田 敏子

青山学院大学大学院
国際マネジメント研究科 教授
日本能率協会グループで月刊誌『人材教育』編集長などを歴任後、英リーズ大学大学院で修士号(MA in Human Resource Management)、英バース大学大学院で博士号(Ph.D.)を取得。2005年より現職。専門は人材マネジメント、組織行動、国際比較など。『ジョブ型・マーケット型人事と賃金決定――人的資本経営・賃上げ・リスキリングを実現するマネジメント』(中央経済社)など著書多数。

── 須田先生は、人事に関する国際比較研究などに取り組まれています。

私はイギリスのリーズ大学院で修士号を取得し、バース大学院で博士号を取得しました。博士号研究として2000年~2002年、日本企業10社とイギリス企業8社を対象に賃金制度の比較分析を行い、両国の人事制度や労働市場がまったく異なることを明らかにしました。

福利厚生制度などで「欧米は日本より不十分」と思われがちですが、実際は逆の場合も多く見られます。欧州の先進国の多くは、失業給付や職業訓練などの社会保障が充実しています。雇用が途切れても、次の仕事を見つけるまでの支援が手厚く、人材流動性が高いので、失業をそれほどネガティブに捉えません。日本の感覚とは大きなギャップがあります。

また、世界ではジョブ型人事が標準です。ジョブに求められる具体的なスキルや経験が「職務記述書」にまとめられ、個人のスキルが該当する社員等級に格付けされ、報酬や昇進もジョブに紐づいて決定されます。

(※全文:1892文字 画像:あり)

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