特集1総論 攻めの事業承継

事業承継に万能の正攻法はない。だが近年の学術知は、承継期こそ「攻め」の経営が不可欠だと示唆する。真の変革とは、伝統を再定義し、売上首位の「新たな主業」を自ら確立することだ。本稿は2020年発表の最新論文を羅針盤に、伝統と革新の葛藤を打ち破るリーダーの孤独な初手を論じる。

伝統と革新が同時に要請されるパラドックス

事業を引き継ぐ経営者には、「伝統を守れ」という重圧と、「時代に合わせて変われ」という要請が同時にのしかかる。過去の遺産に固執すれば新たな市場から見放され、逆に急進的な革新に走れば組織のアイデンティティが崩壊する。2020年にErdoganらが発表した老舗同族企業を対象とした研究は、これを「伝統と革新のパラドックス」として明確に捉え、過去の信念や実践の束と、製品や生産工程を新しくする必要性が衝突する力学を指摘している。過去を単なる保存対象ではなく、次代の成長エンジンへと昇華させることが経営者の至上命題となる。さらにJaskiewiczらも、「企業家的レガシー」の観点から過去の遺産を未来のイノベーションの土台として再解釈することの重要性を説いている。

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