特集1まとめ 見えざる資産から第二創業を仕掛ける

事業承継とは、過去の遺産を受け継ぐ保守的な手続きではない。先人たちが心血を注いで築き上げた歴史、信用、固有の技術という豊かな土壌に立ち、次なる時代を切り拓く「新たな事業を構想する最大の好機」である。

何もない荒野から立ち上げる創業と比べ、事業承継にはすでに社会との強固な結びつきと、分厚い経営資源が存在する。眠れる強みに現代の光を当て、新たな価値へと昇華させる「攻めの事業承継(第二創業)」こそ、日本経済の未来を牽引する最もダイナミックで、勝率の高い挑戦にほかならない。本特集の結びとして、受け継いだ資源をいかにして未来の成長エンジンへと飛躍させるか、その構想の道筋を総括する。

沈黙の価値を掘り起こす
——「陰徳の罠」の打破と暗黙知の形式知化

攻めの事業承継において、第一歩となるのは「自社の足元に息づく真の強み」の再発見である。しかし往々にして、社内に長く身を置く者ほど、自社の卓越した技術や顧客との絆を「当たり前の日常」として見過ごしてしまう。ここに、経営資源における「認識的死角(Cognitive Blind Spot)」[1]が生じる「認知的視覚」が生じる。

この死角をもたらす根源こそ、長年日本企業を支えてきた美徳、「陰徳善事(人に誇ることなく、黙して善行を積む)」の精神である。過剰にアピールすることなく、実直な仕事の積み重ねによって顧客の信頼に応え続けてきた歴史は、まぎれもなく日本企業の誇るべき底力である。

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