批判的思考を育成する良き市民のための3つの学習活動

新型コロナウィルスを巡り連日のように発信される情報のなかには、誤った情報や偏見が混ざっている場合も少なくない。情報を正しく判断し、批判的に読み解く力が重要性を増すなか、批判的思考の意義やその育成について、認知心理学を専門とする京都大学の楠見孝教授に聞いた。

批判的思考とは、人を非難することではない

楠見 孝

楠見 孝

京都大学大学院教育学研究科長・教育学部長・教授
学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻博士課程退学。博士(心理学)。学習院大学助手、筑波大学講師、東京工業大学助教授、京都大学助教授を経て、2008年より教授。専門は認知心理学。主な著書は『実践知』(共編、有斐閣)、『批判的思考力を育む』(共編、有斐閣)など。

ビジネス書を中心に「批判的思考(クリティカルシンキング)」と題した本が数多く出版され、注目を集めている。そのベースにあるのは心理学や哲学、コンサルティングなど多岐にわたるが、そもそも批判的思考とは何なのか。

京都大学の楠見孝教授は、次の3つを要素とする複合的な概念だと定義づける。

1つ目は、証拠に基づく論理的で偏りのない思考だ。信頼できる証拠を探し、自分の視点だけではなく、客観的、合理的、多面的に物事を捉えることがポイントになる。

2つ目は、内省的思考(リフレクション)だ。日本語の「批判的」という言葉はネガティブな意味合いで使われることが多いが…

(※全文:2427文字 画像:あり)

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