対話型組織開発(AI)とワーク・エンゲイジメント
健康経営における主要な概念にも取り入れられている「ワーク・エンゲイジメント」。本稿では、その向上を目的とした新たなアプローチとして「対話型組織開発(AI)」を紹介する。
導入

多湖 雅博
近畿大学短期大学部 講師
博士(経営学)。新潟医療福祉大学講師、京都文教大学講師などを経て2025年より現職。著書は『経営理念・経営ビジョン/経営戦略』(日本医療企画)、『職場の経営学』(中央経済社)、『対話型組織開発(AI)を用いた いきいき社員づくり』(パブファンセルフ)など。
近年、組織経営において「ワーク・エンゲイジメント」という概念への関心が急速に高まっている。ワーク・エンゲイジメントとは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態を指し、具体的には、活力(エネルギッシュで精神的な回復力が高く、困難にも粘り強く対応する状態)、熱意(仕事への強い関与、有意味感や誇りを感じる状態)、没頭(仕事に完全に集中し、夢中になる状態)の三つの要素で特徴づけられるものである。これは、従来の「燃え尽き症候群(バーンアウト)」の対極に位置づけられる概念であり、労働者の健康と労働パフォーマンスの両方を促進するものとされている。
日本においてワーク・エンゲイジメントへの関心が高まっている背景には、深刻化する職場のメンタルヘルス問題がある。厚生労働省の調査によれば、仕事や職業生活において強いストレスを感じる労働者の割合は50〜60%で推移しており、特に仕事の量や質に加え、対人関係がストレスの原因の約1/4を占めている。このような現状から、従来のメンタルヘルス対策、すなわち問題が起きてからの対応である「2次予防(健康不全の早期発見・早期対処)」や「3次予防(再発防止・職場復帰支援)」から、メンタルヘルス不調に陥る者が生まれにくい職場環境を構築する「1次予防(健康の保持増進・健康障害の防止)」へと、その焦点がシフトしている。
(※全文:2137文字 画像:あり)
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