中小企業にこそ求められる 従業員一人一人を大切にする経営
現在、中小企業の多くが人材難や離職率の高さに直面している。その解決策として注目されるのが、従業員エンゲージメントの向上だ。中小企業における従業員エンゲージメントの課題と求められる取組みについて、名古屋商科大学の矢本成恒教授に話を聞いた。
中小企業の多くが
人材活用の課題を抱える

矢本 成恒
名古屋商科大学ビジネススクール(経営大学院)教授
東京大学教養学部基礎科学科卒業。東京大学博士(工学)、筑波大学修士(MBA)。NTT戦略持株会社の経営企画担当部長、IT&放送コンサルティング会社取締役、IT系ベンチャー起業・経営者、技術経営分野の大学講師・研究員を経て現職に至る。日本開発工学会(日本学術会議登録団体)理事・副会長。専門分野はイノベーションマネジメント。
── 矢本先生は、中小企業における従業員エンゲージメントの研究に取り組まれました。
私はイノベーションマネジメントや新規事業開発などを専門に研究していますが、大学教員になる前は経営コンサルタントとして活動し、中小企業診断士の資格も取得しました。
コンサルタントとして、たくさんの中小企業を担当する中で気づいたことがあります。中小企業の多くは、イノベーションや新規事業などよりも、人材をいかに活用するかが最大の課題です。中小企業の離職率の高さや人材難は深刻であり、従業員エンゲージメントは重要な経営テーマです。
従業員エンゲージメントとは、「組織的な目的を持ち、関与、コミットメント、情熱、献身などの、前向きで充実した仕事に対する態度および行動」を意味します。先行研究によると、従業員エンゲージメントは生産性や離職率、自己効力感等と有為な関係性があります。エンゲージメントが向上すると、離職率の低下や生産性の向上につながり、従業員が意欲的にイノベーションや新規事業に取り組むようになるという研究結果もあります。
経営学の分野では近年、従業員エンゲージメントをテーマにした研究が増加する一方で、日本の全従業員の約7割を占める中小企業を対象とした研究は、非常に限定的です。従業員エンゲージメントについて、大企業と中小企業で共通する要素もたくさんありますが、中小企業に特有の課題としてリソースの乏しさがあります。
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