MOKUMOKU 学生が自分の人生と本気で向き合う「もうひとつの学校」

学生が地域の人々と出会い、対話と挑戦を通じて自身の人生を見つめるライフデザインアカデミー「MOKUMOKU」。hataoriが提供する「もうひとつの学校」では、企業へのインターンシップや地域プロジェクトへの参画など、多様な実践から学びを得て、自らの未来を描く若者が育っている。

自分自身との対話を繰り返す
「もうひとつの学校」

髙橋 空雅

髙橋 空雅


合同会社hataori 代表
株式会社PBOOKMARK 執行役員
NPO法人薩摩リーダーシップフォーラムSELF 理事
1996年生まれ。鹿児島県鹿児島市出身。福岡県の北九州市立大学地域創生学群に進学。「まちづくり」を実践と理論の両輪で学び、大学を休学し在学中に鹿児島にUターン。大学卒業後は一般社団法人テンラボへ合流し、ファシリテーションの実践と様々な地域プロジェクトに関わる。2021年、合同会社hataoriを設立。2022年、ライフデザインアカデミー「MOKUMOKU」を開校。2024年より株式会社PBOOKMARKの執行役員に就任し、経営企画を担う。

hataoriが目指すビジョンは、鹿児島を、鹿児島の若者から、そして世界の若者から選ばれる地域にすることだ。鹿児島県では高校生の県外進学率と大学生の県外就職率は、ともに50%を超えている。このままでは若者の県外流出が加速していく未来が待っている。

だが、hataori代表の髙橋空雅氏は、若者が県外へと出ていくことは、必ずしもネガティブなことではないと語る。

「むしろ若者はどんどん県外に出て、鹿児島ではできない経験を積んだ方がいいと思います。ただ、出て行く時に、いつか鹿児島に戻りたいという思いを持ってほしいと考えています」

では、どうすれば鹿児島に戻りたいと思ってもらえるのか。髙橋氏は、若者が鹿児島にいる間に、地域で活躍している人の話を聞いたり地元企業や社会人と交流する中で、自分の人生と向き合い、人生をデザインすることが重要だと考えた。そして、そうした機会を提供する場として、2022年にライフデザインアカデミー「MOKUMOKU」を立ち上げた。

MOKUMOKUは、鹿児島県在住の大学生・大学院生・短大生がまち全体を学び舎として、自分の人生を考えデザインしていく育て合いのコミュニティだ。コンセプトは「社会にひらかれた、もうひとつの学校」。学生たちは1年かけて自分の人生と本気で向き合っていく。

MOKUMOKUには「自分自身との対話」「社会の中での挑戦」「繰り返し行う言語化」という3つの要素がある。2週に1度行われる定例会では、参加者が将来の姿ややりたいことについて何度も対話し、悩みや気づきを共有する。また、外部から招いたゲスト講師の話を聞いて学びを深めたり、ファシリテーションやグラフィックレコーディングといったスキルを学ぶ機会も設けている。

「MOKUMOKU」では1年をかけて何度も対話を繰り返し、学びや気づきを深め、自分の人生と本気で向き合っていく。

「MOKUMOKU」では1年をかけて何度も対話を繰り返し、学びや気づきを深め、自分の人生と本気で向き合っていく。

地域プロジェクトへの参画など、社会に開かれた場で多様な実践を経験。

地域プロジェクトへの参画など、社会に開かれた場で多様な実践を経験。

MOKUMOKUの特徴の1つは、挑戦の機会の多様さだ。企業へのインターンシップや地域プロジェクトへの参画、自ら立案したマイプロジェクトの実施など、一人で取り組むものからチームで取り組むものまで、多彩な挑戦の機会がある。それらの共通点は、挑戦が社会に開かれたものであることだ。

「MOKUMOKUでは学生たちが企業や地域の方々、高校生や中学生など、多世代・多業種の方々との関わりの中で、自分自身を掘り下げていきます。挑戦して振り返りを行い、学びや気づきを得て、参加者同士で共有し、また次の挑戦につなげていきます」

学生が地域や社会人とつながり、
「働く」が楽しみになる社会に

hataoriは、髙橋氏が学生時代から続けていた団体を法人化し、2021年に設立された会社だ。

髙橋氏は学生時代から数々のプロジェクトを展開してきた。2018年に大学生の仲間とともに立ち上げた自己探求合宿「ココカラカイギ KAGOSHIMA」は1泊2日の合宿で、学生が鹿児島県内で活躍する社会人と交流し、対話を重ねながら自分の過去・現在・未来と向き合い、最終的に自分のありたい姿と明日からの行動宣言を行う。

2018年から2019年に全10回開催した「CONNECT」は、一般的な就職活動に対する疑問から企画した。大学の友人たちが就職活動に入った瞬間、黒髪・スーツ姿になり、面接では普段の自分が思ってもいないようなことを語る。髙橋氏は、そういう状況に違和感を抱いた。

CONNECTは、街中のカフェやレンタルスペースで企業の採用担当者と学生が私服で参加する交流イベントだ。月に1回開催したが、回を重ねるうちに採用担当者と学生という垣根が取り払われ、プライベートな話をするほどの関係性を築けたという。

また、学生が企業のリソースを活用しながら地域課題の解決策を企画・提案・実施するプログラム「HATCH program」(2019年)や、働くと就活を考える情報冊子「material」(2020年、2021年)の発行なども手掛けた。

HATCH programでは14名の学生が参加し、3社がパートナー企業として協力。スポーツ・働き方・リサイクルという3つの視点で企画を実践した。プログラム期間中に起業家の講座を実施するなど、学びと実践を繰り返すプログラムを設計した。

「material」は、学生の就活に関する本音をオープンにした冊子だ。県内の学生からなる編集委員会が、学生へのアンケート集計・インタビューからライティングまですべてを担い、学生視点による魅力的な企業の要素や魅力的な企業ランキングなども掲載した。

「数々の活動を通して、社会人との交流は学生の視野を広げ人生設計の参考になると確信しました」と髙橋氏は話す。

若者が地域社会とゆるやかにつながれば、働くことは前向きで楽しいことだと思えるようになるのではないか。働くことや暮らしを楽しむ人がたくさん増えれば、鹿児島はワクワクできるまちになり、鹿児島に残りたい、戻ってきたいと思う人も増えていくはずだ。そうした思いが、hataoriの設立につながった。

自身の活躍の場を広げ、
MOKUMOKUをさらに拡大へ

自らの人生を主体的にデザインする多数の若者を輩出している。

自らの人生を主体的にデザインする多数の若者を輩出している。

2022年にスタートしたMOKUMOKUは現在、4期目を迎えている。1期と2期の参加者は10名弱だったが、参加した学生から評判が口コミで広がり、3期と4期はそれぞれ15名程の学生が参加した。また、メンターとして協力してくれる社会人も増え、MOKUMOKUの修了生が運営側に回り、サポート役として学生の悩み相談に乗るような流れも生まれている。

髙橋氏は、MOKUMOKU修了生の成長に手応えを感じている。教員を目指していた学生は、インターンシップを経験し、社会のことを知らないまま教員になることに疑問を感じた。そして自身の人生を見つめ直し、まずは就職して社会を知り、そこから教員になるというキャリアを設計した。また、県外に就職したが転職で鹿児島に戻ってくる若者も出てきた。

「MOKUMOKUを通して、自分の思いを掘り下げて言語化する力が確実に養われていると感じます。また、企業や地域の人たちとの交流で視野を広げる機会にもなっています」

これまで様々なプロジェクトを展開してきた髙橋氏だが、MOKUMOKUは自身にとって「人生をささげたいと思える大きなチャレンジ」だという。今後に向けて、MOKUMOKUの参加者を増やすだけでなく、幅広い年齢層に向けたプログラムを充実させて、多様性のあるコミュニティに育てていきたいと展望を描いている。

自身の知見と経験を広げるために、髙橋氏は現在、NPO法人薩摩リーダーシップフォーラムSELFの理事と、PBOOKMARK(ピーブックマーク)の執行役員も務めている。

薩摩リーダーシップフォーラムSELFは鹿児島をベースに、年齢、性別、国籍、職業、組織などあらゆる垣根を超えて活動するラーニングコミュニティだ。髙橋氏はSELFが主催するイベント「薩摩会議」の事務局を担当している。

「2025年の薩摩会議には全国から600人近い経営者が参加しました。さらに、学生たちとの幅広いネットワークも築いています。薩摩会議とMOKUMOKUのつながりを強化し、全国にいる鹿児島出身の学生たちが鹿児島でインターンを経験したり、県内のプロジェクトに参画したりする機会をつくっていけたらと考えています」

また、PBOOKMARKは「ローカルをもっと面白く!」を掲げ、EC運営サポート、コンサルティング、社内教育サポート、コミュニティカフェ運営、コワーキングスペース運営、イベント企画などを展開する会社だ。

髙橋氏は、同社が展開するプロジェクトのディレクションや、店舗を超えたスタッフ同士のつながりや働きがいのデザインに取り組み、これまで触れる機会の少なかったビジネスへの見識を深めている。

SELFやPBOOKMARKでの経験も活かしながら、髙橋氏はhataoriの事業拡大に邁進している。来年度には、中高生向けと社会人向けのMOKUMOKUをスタートさせる考えだ。MOKUMOKUを多様な人たちが成長するコミュニティへと発展させるために、髙橋氏の挑戦は続いている。