【10月30日古川俊治デジタル大臣会見要旨】サイバーセキュリティ人材育成策を説明
古川俊治デジタル大臣は2026年10月30日、記者会見を開いた。古川大臣は、デジタル大臣、AI・デジタル改革推進担当、サイバー安全保障担当、コンテンツ戦略担当、内閣府特命担当大臣(知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策、人工知能戦略、海洋政策、サイバー安全保障)を務める。サイバー安全保障担当大臣としては、不正アクセスなどによる情報漏えいの被害が相次ぐなか、「サイバー対応特設サイト」を立ち上げたと発表した。このほか、英国政府デジタルサービス(GDS)との協力覚書の再締結と、政府職員向けの生成AI利用環境「ガバメントAI 源内」に関する2件の取り組みを報告している。質疑応答では、日独のフュージョンエネルギー連携、サイバーセキュリティ人材の確保、国会答弁作成支援AIの信頼性などについて見解を述べた。
相談窓口や注意喚起を1ページに集約
サイバー安全保障担当大臣としては、10月30日に「サイバー対応特設サイト」を立ち上げたと報告した。不正アクセスなどによる情報漏えいの被害が相次ぐなか、関係機関による国民や事業者向けの相談窓口、関連する発表、注意喚起などを1つのページにまとめた。サイトは内閣官房国家サイバー統括室のトップページに設けた赤いバナーからすぐに開けるようにし、掲載内容は随時更新する。
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相談窓口や注意喚起の対象となる人についても、個人か事業者かといった区別を示している。10月26日に開かれた第1回「サイバーセキュリティに関する関係閣僚会議」で、高市早苗内閣総理大臣は国家サイバー統括室に対し、対象を明確にした情報発信の強化を指示していた。古川大臣は、特設サイトがこの指示を踏まえて情報発信を強化するものだと説明。関係省庁や機関と連携しながら、国民や事業者の不安や懸念に適切に対応できるよう政府一丸となって取り組む考えを示した。
英国GDSとの協力覚書を再締結、2分野を追加
続いて、英国政府デジタルサービス(GDS)とのデジタル政府分野における協力覚書(MoC)を結び直したことを報告した。10月28日、塩崎彰久デジタル副大臣と、来日中の英国デジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)のルース・マッケンジー閣外大臣が署名している。GDSは英国で公共のデジタルサービスを提供する行政機関だ。デジタル庁とは2022年に協力覚書を結び、友好関係を築いてきた。今回は覚書の期限を迎えていたことから、マッケンジー閣外大臣の来日に合わせて再締結した。
新たな覚書では、双方の関心を踏まえ、「公共部門におけるAIの利活用」と「サイバーセキュリティ」を協力分野に加えた。協力分野は、ユーザー中心のデザイン及びデザインシステムやデジタル調達改革などを含む計8分野となる。協力は署名日から3年間続く。その後は、いずれかが相手方に対し、更新しない意向を6か月前に書面で通知しない限り、1年ごとに自動で更新される。古川大臣は、新たな覚書のもとで英国とベストプラクティスを共有し、相互の学びを推進するなど、連携に向けた取り組みを進めると述べた。
質問解析から草案生成、矛盾検証まで統合
ガバメントAI 源内については、2件の取り組みを発表した。源内はデジタル庁が内製開発した政府職員向けの生成AI利用環境で、2026年度は全府省庁の政府職員約18万人を対象に大規模実証を進めている。
1件目は、政府職員による国会答弁案の作成を支援する「国会答弁作成支援AIアプリ」のプロトタイプ版の提供である。会見当日の10月30日から、約18万人の政府職員への提供を始めた。
国会答弁の作成は、限られた時間で高い正確性と一貫性が求められ、職員の負担が特に大きい業務の一つだ。質問内容の確認から、過去答弁や根拠資料の検索・分析、答弁案の作成までを短期間でこなさなければならない。社会課題が複雑になるにつれ、政策の背景や経緯の把握、追加質問への対応など、検討すべき事項も増えている。資料の検索や表記・整合性の確認といった定型作業に多くの時間を取られ、質問の趣旨を的確に捉えて分かりやすい答弁を練り上げる時間を十分に確保できないことが課題になっていた。
アプリは、国会質問の内容解析、過去答弁や根拠資料の検索、答弁の草案生成、更問予測、矛盾検証などの機能を、AIにより統合的に提供する。開発には16省庁から公募した実務経験の豊富な職員102人が評価者として参加しており、寄せられた指摘や改善提案の一部は既に機能の改修に反映されている。第222回臨時国会で試験的に提供し、有効性や操作性、出力品質などを検証する。その結果や利用者の意見を踏まえて必要な改善を行い、2027年1月からの通常国会で本格提供を始める計画だ。
源内の利用者の71.7%が「満足」と回答
2件目は、「ガバメントAI 源内 利用状況アンケート調査(第1回)」の結果である。大規模実証における導入効果と課題を把握するために実施したもので、古川大臣によると、8月から9月にかけて行った。対象は源内を利用する各府省庁等の職員で、6,439人から回答を得た。
利用者の71.7%が源内への満足度について「満足」と答え、過半数の54.4%が、源内を導入した業務で1週間当たり1時間以上の業務時間の短縮を実感していた。短縮効果は利用者1人当たり週平均約1.83時間(約110分)と推計される。節約できた時間を、より踏み込んだ検討や従来対応できなかった業務に振り向けることで、業務の質や働き方が改善したとの声も寄せられた。
一方で、古川大臣は、回答精度や回答速度の面で今後の機能強化が必要だという声や、使い方がよく分からないという声もあったと説明した。回答者の31.2%は、源内をほとんど、または全く利用していなかった。デジタル庁は今後、AIを使いこなしたい職員に寄り添う環境づくりとして、職員が作成したスキルやデータを組織横断的に共有・活用できる「源内ライブラリ」を年度内に提供し、利用省庁の優れた活用事例(ユースケース)やプロンプトの共有を通じて活用の裾野を広げる。あわせて、利用頻度が低い、または利用していない職員への働きかけを進め、AIの徹底活用と利用の定着を図る。適切な利用方法や注意点の周知を通じて、「AIに振り回されない働き方」の確保も目指す。2027年1月ごろには第2回調査を実施する予定だ。古川大臣は、AIの活用で高めた業務の質を、より良い行政サービスとして国民に還元できるよう努めると語った。
日独のフュージョンエネルギー連携は7件
質疑応答では、科学技術政策担当大臣としての古川大臣に、10月28日の日独首脳会談で発出された「先端技術協力に関する日独首脳共同宣言」について質問が出た。記者は、フュージョンエネルギー(核融合エネルギー)分野で官民が連携する意義と、ドイツから期待する知見を尋ねた。
古川大臣は、首脳会談の成果文書の一つとして共同宣言が発出され、フュージョンエネルギー分野での連携が盛り込まれたと説明した。古川大臣によると、文部科学省とドイツの連邦研究・技術・宇宙省の協力に加え、企業を含めた協力など7件の日独間の連携が盛り込まれている。共同宣言には、文部科学省とドイツ連邦共和国の連邦研究・技術・宇宙省の間で、フュージョンエネルギー分野の協力に関する共同意向表明書の準備が進められていることや、三井物産株式会社、京都フュージョニアリング株式会社、Siemens Energy Global GmbH & Co.KGの3社間のMoU(覚書)などが記されている。
古川大臣は、一連の連携が、日独がともに強みを持つヘリカル方式やレーザー方式を中心とした共同研究の推進や、日本が持つ技術の海外展開を目的としたものになるとの認識を示した。内閣としては、フュージョンエネルギーの実現に向けて日独の政府間・企業間の連携が進むことを歓迎している。古川大臣は、こうした取り組みを通じて日本企業が世界をリードすることに期待を寄せ、政府として企業の取り組みをしっかり支援していく構えを見せた。
セキュリティ人材の育成は既存施策を実行
続いて記者は、今般のサイバーセキュリティ問題の背景の一つとして人材不足が指摘されていることを取り上げ、政府の認識と早急に進める対策を尋ねた。
古川大臣は、サイバー攻撃の脅威が非常に深刻になるなか、官民による社会全体のサイバーセキュリティ水準の向上と、水準向上を支える人材の確保が非常に重要だと答えた。政府はこれまでも、さまざまな育成策を進めてきた。古川大臣が挙げたのは、政府機関や地方公共団体、重要インフラ事業者などの能力向上を目的に、総務省と国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が実施する実践的サイバー防御演習「CYDER」と、重要インフラ分野を中心に高度なセキュリティ人材を育成する経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「中核人材育成プログラム」である。若年層の高度なセキュリティ人材を育てる取り組みとしては、IPAと一般社団法人セキュリティ・キャンプ協議会が主催し、経済産業省が共催する「セキュリティ・キャンプ」や、総務省とNICTによる「SecHack365」がある。大学や高等専門学校が実施する、セキュリティの基礎的な素養も身につける教育プログラムを文部科学大臣が認定する「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」も紹介した。
さらに国家サイバー統括室は2026年4月3日、官民の各組織によるセキュリティ人材の育成を支援するため、人材に具体的に求められる役割や技能を体系的に整理した「サイバーセキュリティ人材フレームワーク2026」を公表した。古川大臣は、人材の育成には一定の期間を要するため、当面は政府や関係機関の専門人材の知見を生かして必要な対応を進めつつ、各施策を着実に実行し、人材の充実を図る考えを示した。
IDとパスワードの使い回し回避を呼びかけ
特設サイトをこの時期に立ち上げた理由と意義、個人情報の流出が相次ぐなかで国民に伝えたいメッセージについても質問があった。
古川大臣は、サイバー攻撃の脅威が非常に深刻化しており、政府全体で重大に受け止めていると答えた。先の関係閣僚会議での総理指示に加え、前日の10月29日に開かれた経済財政諮問会議の席上でも、同様の指示を受けたという。そのうえで、政府の省庁や公的な機関が出している注意喚起や、事業者と国民に向けたメッセージを的確に伝えるため、1つのサイトにまとめたと説明した。特設サイトに掲載された情報は公的なものだと分かるため、ぜひ見てほしいと呼びかけた。
事業者に対しては、業種によって注意点が異なり、重要インフラ事業者とその他の事業者でも気を付けるべき点が違うとして、自社の立場に合った情報を確認するよう求めた。一般の国民には、二次被害を防ぐための対策を挙げている。まず、IDとパスワードの使い回しを避けることだ。個人情報が流出している恐れがあり、IDにメールアドレスを使っている人も多いことから、不審なメールが届いても開かずにすぐ削除するよう求めた。使っているアプリケーションが最新バージョンになっているかを確認し、更新してほしいとも訴えた。
批判的な目で確かめながら活用
国会答弁作成支援AIアプリについては、業務効率化への期待と、AIの支援を受けた答弁の信頼性をどう担保するかについて質問が出た。
古川大臣は、職員が答弁を作る時間をかなり短縮できることに加え、業務の効率化によって質問の趣旨に沿ったより良い答弁を作成でき、国会審議の充実につながる点を評価した。信頼性については、AIに頼り切りになる懸念は医療の世界などでも指摘されていると前置きし、AIにはまだ間違いもかなりあると述べた。利用者がAIの答えが正しいかどうかを常に批判的な目で確かめながら使い、人とAIの双方の能力が上がっていく関係を築くことが重要だという。デジタル庁も、AIが提示した情報や答弁案をそのまま採用せず、職員自身が根拠資料と照合して確認することを原則とし、政策判断や答弁内容の確定をAIに委ねないとしている。
古川大臣自身もデモンストレーションを見て、よくできていると感じたと明かした。臨時国会でのプロトタイプ版の試用を通じて各大臣からも意見を集め、2027年1月からの通常国会での完成版につなげたい考えだ。
基礎から社会実装までの取り組み学ぶことに意欲
オンラインで参加した記者からは、日独の技術協力のうち、フュージョンエネルギー以外で古川大臣自身が関心を持つ分野について質問があった。
古川大臣は、ドイツを、科学をうまく経済成長につなげている国と評価した。人口は日本より少ないものの、科学論文数や技術の社会実装の面で学ぶ点が多いという。協力分野としてはAIや量子、バイオテクノロジーなどを挙げた。なかでも自身が専門としてきたバイオテクノロジーの分野では、ドイツが研究成果をうまく社会実装していると指摘。基礎研究とビジネスの距離が縮まるなか、基礎から社会実装までの取り組みを学んでいきたいと意欲を示した。
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