【10月27日関芳弘文科大臣会見要旨】防衛省ファンディングへの大学応募が倍増「研究の在り方は各大学が自主的に判断」
関芳弘文部科学大臣は2026年10月27日の記者会見で、徳島県・高知県への出張と、山梨県立農林高等学校、宇宙航空研究開発機構(JAXA)相模原キャンパスの視察について報告した。あわせて、夜間中学を題材にした映画「星の教室」とのタイアップを発表している。質疑で取り上げられたテーマは5つある。防衛省の安全保障技術研究推進制度への大学の応募増加、不登校の子どもの健康診断、東京大学の総長選考、学部生の研究支援、国立大学法人運営費交付金で、それぞれについて文部科学省の考えを示した。
徳島大学と阿南高専で研究・教育を視察
1つ目の報告は、10月24日から25日にかけての徳島県と高知県への出張である。24日は徳島大学を訪れ、光工学に関する研究施設を見学した。光学をはじめ、大学が強みとする研究分野について説明を受けている。基礎研究から研究開発、社会実装までを産学連携で進める取り組みについても意見を交わした。同じ日に訪問した阿南工業高等専門学校では、高度情報人材の育成をはじめとする教育現場を視察した。研究やロボコンに取り組む学生とも対話している。
Photo by hamazou/ Adobe Stock
25日は、天皇皇后両陛下ご臨席のもとで開かれた国民文化祭の開会式に出席した。大会の正式名称は第41回国民文化祭・第26回全国障害者芸術・文化祭で、統一名称は「よさこい高知文化祭2026」である。会期は2026年10月25日から12月6日までの43日間で、「心踊る、文化咲く」をキャッチフレーズに掲げる。関大臣は、個性豊かで多彩な文化芸術が披露され、未来へ継承される大会になることを願うと述べた。出張で得た知見を踏まえ、関連施策の充実に取り組む考えを示している。
専門高校の重要性を実感、MMXの管制室も視察
2つ目の報告は、10月26日に実施した山梨県立農林高等学校とJAXA相模原キャンパスの視察である。農林高校では、地域資源のブランディングなど、産業界と連携・協働した先進的な取り組みを見学した。生徒からは学校の魅力や将来の目標を聞いている。地域や企業と連携しながら主体的に学ぶ生徒の姿に接し、関大臣は農業高校をはじめとする専門高校の重要性を改めて実感したという。高校教育改革に取り組む決意を新たにしたとも語った。
MMXは10月20日にH3ロケット10号機で打ち上げられ、世界初となる火星圏からのサンプルリターンを目指している。JAXA相模原キャンパスでは、このMMXの管制室と、月面環境を模擬した試験フィールドを視察した。関大臣は、日本の宇宙開発利用を支える基盤的な取り組みの重要性を実感したと話す。関連施策の充実に引き続き取り組む方針だ。
夜間中学の映画とタイアップ、全国にポスター
3つ目の報告は、11月6日に公開予定の映画「星の教室」とのタイアップである。この映画は夜間中学を題材としている。
文部科学省はタイアップの一環としてポスターを作成した。ポスターは全国の自治体に配布し、夜間中学のほか、図書館や公民館など地域住民が訪れる施設にも掲示してもらう予定だ。夜間中学は、さまざまな事情で義務教育を十分に受けられなかった人にとって、学び直しの場となる。文部科学省は各地域が進める夜間中学の設置促進と充実を引き続き支援し、制度の周知にも力を入れる。
防衛省ファンディング、他制度と同様に活用可能
質疑では、幹事社の記者が防衛省の安全保障技術研究推進制度、いわゆる防衛省ファンディングを取り上げた。防衛省が10月20日に公表した採択結果によると、2026年度の公募には560件の応募があり、採択は47件(委託事業33件、補助事業14件)だった。応募のうち大学等からは291件にのぼる。防衛省は「大学等」を、大学、高等専門学校、大学共同利用機関と定義している。2025年度の大学等からの応募は123件だった。1年で2倍以上に増えたことになる。
記者はまず、応募が増えた背景を挙げた。運営費交付金など大学の基盤的な経費が、長年低く抑えられてきたことが指摘されているという。研究費を確保するために防衛省が設定する研究テーマへの依存が進めば、長期的には学問の自由が損なわれるとの懸念も出ている。こうした点を踏まえ、記者は大学の学術を所管する文部科学省としての受け止めを尋ねた。
関大臣は、大学からの応募が増えていることは承知しているとした。大学における研究の在り方は、各大学の責任において自主的に判断されるべきだとの認識を示している。続けて、同制度の特徴を挙げた。基礎研究であること、研究成果の公表に制限がないこと、知的財産権を研究実施者等に帰属させられることなどである。関大臣は、こうした特徴を踏まえ、他の競争的研究費制度と同じように大学などのアカデミアも活用できる制度だと考えている。文部科学省は、第7期科学技術・イノベーション基本計画に掲げた科学技術と国家安全保障との有機的な連携に向け、関係府省庁との連携を深めていく。
不登校の子どもの健診、受診機会の確保へ
総務省行政評価局は10月22日、「不登校等のこどもの健康診断に関する調査」の結果を公表した。2025年度の学校健診の受診状況を抽出調査したところ、不登校のこどものうち全科目を受診しなかった割合は、小学校で5.7%、中学校で19.9%だった。記者は、健康診断は疾病の早期発見など子どもの健康を守るうえで重要だとして、調査結果を受けた文部科学省の取り組みを質問した。
関大臣によると、総務省は文部科学省を含む関係省庁に調査結果を通知した。総務省の報道資料では、対策を求めた先として文部科学省、こども家庭庁、厚生労働省の3省庁を挙げている。文部科学省に求められた対応は、主に2つある。1つは、子どもや保護者が健康診断の重要性を理解できる資料を作り、周知・啓発を図ることだ。もう1つは、学校医が経営または勤務する医療機関で受診できるようにしている事例を紹介し、取り組みを広げることである。関大臣は、不登校の児童生徒にも受診の機会を確保する仕組みが必要だとして、まずはこの2つの対応を速やかに進めると述べた。文部科学省は有識者会議で教育関係者や医療関係者の意見を聞きながら議論を重ねている。健康診断を受けられなかった児童生徒の健康管理の在り方についても、同会議で検討を進めていく。
東大総長選考、新潟大学との違いを説明
続いて、東京大学の総長選考をめぐる質問が出た。東京大学の総長選考・監察会議は9月28日、総合文化研究科の藤垣裕子教授を次期総長予定者に決めた。同日の意向投票では、別の候補者が最も多くの票を集めていた。文部科学省は10月20日、高等教育局長名の文書で、同大の監事と運営方針会議に総長選考のプロセスの検証を依頼している。
記者は、関大臣が10月23日の会見で、検証を依頼した理由として3つの特異な要素を挙げたことに触れた。そのうえで、2025年9月に行われた新潟大学の学長選考を例に挙げた。新潟大学でも意向投票の1位と2位の得票に2倍以上の差がついており、各大学が定めた規定に基づいて意向投票を実施した点も東大と同じだという。記者は、東大にだけ検証を依頼した理由を問うた。
関大臣はまず、東大の選考の仕組みを説明した。東大の総長選考・監察会議は、5人の候補者で1回目の意向投票を行い、上位3人で2回目を行う仕組みを自ら決めていた。2回の投票のいずれでも1位の候補者が2位の2倍以上の票を得ており、2回目の投票では1位の候補者が過半数を占めた。関大臣は、この点に新潟大学とは異なる特異性があるとの見方を示した。2004年の国立大学法人化以降、2026年10月20日までに行われた学長選考は568件ある。このうち意向投票の結果と異なる選考は、文部科学省が把握する限り41件だ。関大臣が挙げた要素をすべて備えるのは今回の東大だけであり、より高い説明責任が求められると強調した。
新潟大学については、学長を選んだ学長選考・監察会議の議事概要が公表されている点に言及した。議事概要には、学長に求められる経験や実績をめぐる主な意見が示されている。委員の投票を含む具体的な選出の経緯も明らかにされた。さらに、学内外の意見を受けて議長が出した文書でも、選考理由などが改めて説明されている。関大臣は、この対応から見ても東大の総長選考とは状況が異なるとの考えを示した。
質疑の後半では、東大の総長選考について重ねて質問があった。記者が挙げたのは、国立大学法人ガバナンス・コードの内容である。同コードは透明性や信頼性を確保するための公表を求める一方で、人事に関わる審議であることにも触れている。記者は、人事情報の扱いを踏まえても、東大の説明は不十分と考えるのかを尋ねた。関大臣の答えは、学内外から説明を求める項目が数多く挙がっているのは、総長選考・監察会議が一つひとつ納得できる説明をしていないためだというものだった。まずは大学側が、学内外から寄せられる声に丁寧に説明してほしいと求めている。
学部生の自主研究、早期の挑戦を後押し
特定非営利活動法人日本科学振興協会(JAAS)は10月25日、「学生アイデアファクトリー2026」の最終発表会を開いた。学生アイデアファクトリーは、自主研究に取り組む大学学部生・短大生・高専生の研究アイデアを見いだし、支えるプロジェクトだ。記者は、早い段階から研究に挑戦する学生を支える取り組みの意義を尋ねた。
関大臣は、全国から選ばれた大学生や高専生などが研究アイデアを発表し、活発な議論が交わされたと聞いていると述べた。参加者の今後の活躍にも期待を寄せている。関大臣は、早くから研究に親しむ機会や、仲間と切磋琢磨する機会を学生に提供することが大切だと考えている。将来の科学技術イノベーションを担う人材の意欲と能力を高めるうえで、こうした機会が欠かせないためだ。文部科学省は、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業など、科学技術に意欲と能力を持つ児童生徒を応援する取り組みを幅広く進めている。
記者は、大学の学部生を対象とした支援の方向性も質問した。関大臣は、学生をはじめ、将来の日本の科学技術を担う人を応援する機会を大事にしたいと答えた。具体例として挙げたのは、学部生が国際的な学生コンテストに参加する際の支援である。若い世代が研究開発に取り組む機会を増やし、文部科学省として後押ししていく考えを示した。
運営費交付金、概算要求で1兆2,512億円
別の記者は、安全保障技術研究推進制度への応募増加に関連して、国立大学の予算について質問した。記者によると、応募増加の背景には学術研究への資金配分が全体として細ってきたことがあるという。運営費交付金は増額の方向にあるものの、物価が高騰する中で長年の減額が続いたため、まだ足りないとの見方もある。記者は、文部科学省の今後の方針を尋ねた。
関大臣は、2027年度予算の概算要求で国立大学法人運営費交付金として1兆2,512億円を計上していると説明した。文部科学省が8月28日に示した概算要求によると、この額は前年度から1,541億円の増額にあたる。関大臣はこの額の確保に取り組み、運営費交付金そのものを増やしていきたい考えだ。そのうえで、大学における研究の進め方は、各大学が自らの考えに基づいて決めていくものだと改めて述べた。
※政策動向・省庁会見の要点などを、毎日メールでまとめてお届けしています。▶無料メルマガ登録はこちら