【文科省議事録要旨】気候変動研究の中間まとめを報告、AI融合や民間利用の一部有償化
文部科学省は、2026年7月23日に対面とオンラインを組み合わせて開いた科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の第13期環境エネルギー科学技術委員会(第3回)の議事録を公開した。公開で扱った議題は「今後の気候変動研究及び地球環境データ連携基盤の在り方等に関する有識者会議中間まとめについて」で、事務局から中間まとめの報告があった。中間まとめには、AI技術と融合した次世代気候モデルの開発や、気候予測データを民間企業などが利用する際の一部有償化が盛り込まれている。
予測研究プログラムの終了を見据え検討
報告を担当したのは、委員会の事務局を務める文部科学省研究開発局環境エネルギー課である。同省は、これまで実施してきた「気候変動予測先端研究プログラム」が2026年度で終了することも踏まえ、今後の方向性を検討するために有識者会議を設置し、2026年1月から議論を進めてきた。
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中間まとめ(2026年7月付)は、「気候危機に挑む日本の科学:研究から実務へ~AIとデータ基盤が駆動する実装の加速~」と題されている。
日本の強みと海外のAI活用の動向
中間まとめはまず、気候変動の影響が世界でも日本でも顕在化し、対策があらゆる分野で急務になっていると指摘する。日本の気候科学は「地球シミュレータ」などを活用し、約25年にわたって世界をけん引してきた。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)にも貢献しており、事務局はトップ10%論文の割合も非常に高い分野だと説明した。一方、海外ではAI技術の飛躍的な向上を受け、AI気候研究プロジェクトによる計算効率の大幅な向上やデータの統合解析が進んでいる。有識者会議は、AI技術との融合に加えて、融合を実現するための計算資源の確保も重要だと指摘した。
データの使い方にも課題がある。観測データや予測データを蓄積するデータ統合・解析システム(DIAS)などのデータ基盤は主に研究向けに設計されており、基盤同士の連携にも取り組む余地があるという。政策やビジネスでもデータの利活用に潜在的なニーズがあることから、中間まとめは、研究成果の創出から政策・実務への実装までをつなぐ「データバリューチェーン」全体を統合的に設計し、気候研究とデータ連携基盤を緊密に連携させる必要性を示した。事務局は、2026年3月に閣議決定された第7期科学技術・イノベーション基本計画でも「科学とビジネスの近接化」が指摘されていることにも言及している。そのうえで、利用者のニーズを把握しながら研究にフィードバックし、データバリューチェーン全体をループのようにつなげることが重要だとの指摘を有識者会議から受けたと説明した。
次世代気候モデルとデータ基盤の連携を推進
こうした課題を踏まえ、中間まとめは「気候科学の継続的強化」「データバリューチェーン強化」「AI for Science の推進」の3つを今後の方向性に掲げた。
気候変動研究では、AI技術との融合や衛星観測データの一層の活用によって次世代気候モデルを開発し、CMIPなどを通じて最先端の気候予測情報を提供することで、IPCCなどの国際枠組みへの貢献を続ける。極端現象の要因分析への発展などを通じたイベントアトリビューション研究の深化や、カーボンバジェット評価の精緻化も盛り込んだ。さらに、地球環境AIによる近未来から世紀末までの時間連続的な大規模気候予測や、AIを活用したハザード予測、ロス&ダメージ評価など、適応策に直結する付加価値の高い気候予測情報を生み出すとしている。
地球環境データ連携基盤については、衛星観測や現場観測、気候予測データなどの基盤を相互に接続し、メタデータの標準化やAPI連携によって横断的にアクセスできる「地球環境データ基盤ネットワーク」を構築する。あわせてデータの「AI-Ready化」を進め、利用者の目的に応じて実務や政策判断に直接結びつく付加価値を生み出す。事務局は、データが実務や政策判断に使われるには、利用者が安心して使えるようサイバーセキュリティ対策やデータガバナンスを整える必要があると説明した。インフラの老朽化対策・増強も盛り込まれている。持続的な運営に向けては、気候予測データを民間企業などが利用する際に一部有償化を導入しつつ、利便性の向上も両立させる方針である。情報を創出する側と意思決定する側を仲介する情報仲介人材の育成も掲げた。
連携の面では、国内で関係府省庁との連携を進めるとともに、「気候変動リスク産官学連携ネットワーク」などの枠組みも活用して企業との連携を強化し、スタートアップなど多様な主体も巻き込む。海外とは、欧州のホライズン・ヨーロッパや米国のジェネシスミッション、民間財団のチャレンジなどの機会を活用して国際連携を強化する。グローバルサウスなどの地域のレジリエンス強化への貢献と、日本が強みを持つ技術の海外実装も推進するとしている。
スタートアップとの連携の具体像に質問
意見交換では、青砥なほみ委員(広島大学半導体産業技術研究所特命教授)が、どのようなスタートアップとどのような連携を考えているのかを尋ねた。事務局が例に挙げたのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙戦略基金が支援しているような、これまでにない方法でデータを取得するスタートアップと、文部科学省がDIASなどで公開しているデータを活用してサービスにつなげるスタートアップである。そのうえで事務局は、スタートアップがデータを入れやすく使いやすい形での公開や、AIの活用も見据えたデータの出し方を、有償化の論点とあわせて今後考えていく必要があると答えた。
有識者会議のヒアリングなどに協力した本郷尚主査(株式会社三井物産戦略研究所国際情報部シニア研究フェロー)は、産業側の立場から、成果をいかに政策や産業に活用していくかが重要だと述べた。AIを研究のためだけでなく、説明する側にも活用してほしいとの期待も示している。委員会はこの後、研究開発課題の事前評価を非公開で審議した。
詳細はこちらで確認できる。
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/115/gijiroku/1414021_00007.htm
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