「持続可能な開発のための教育」をその先進地域、奈良から批判的に考える

奈良でいち早く行われてきたESD。しかし現在のESD政策には、持続可能な社会とは何かという問いを棚上げし、行動ばかりを重視する傾向がある。ESDの流行の背景にある知識基盤社会の到来について最初に考察した人物のひとり、W・ベンヤミンの思想を手がかりに、その改善策を考える。

学校教育政策の基盤ではあるが
問題含みのESD政策

浅井 健介

浅井 健介

奈良教育大学 学校教育講座 特任講師
1989年奈良県奈良市生まれ。奈良県立奈良高等学校、京都大学教育学部卒業。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程研究指導認定退学。修士(教育学)。奈良県高等学校非常勤講師(国語)、東大阪大学短期大学部実践保育学科非常勤講師などを経て、現在、奈良教育大学学校教育講座特任講師。専門は教育哲学・教育思想史。ベンヤミンやアーレント、アガンベンなどの思想を手がかりに、近・現代社会との関係に焦点を当てた教育の研究を行っている。

近年、SDGs(持続可能な開発目標)やESD(持続可能な開発のための教育)という言葉を耳にする機会が多くなりました。いまやテレビや広告はこの言葉で溢れかえっています。

実は現在、この理念は学校教育政策の基盤にも据えられています。2016年の中央教育審議会答申には、「持続可能な開発のための教育(ESD)は、次期学習指導要領改訂の全体において基盤となる理念である」という記述が盛り込まれ、それに基づいて改訂された現行の学習指導要領(2017年告示)に新たに設けられた「前文」には、「持続可能な社会の創り手」の育成が「これからの学校」の課題として掲げられたのです。

実はそれは、…

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