現代アメリカを「理解」する哲学
トランプ政権を動かす哲学とは何か。テクノリバタリアンたちの世界観を読み解くと、「未来」「自由」「宗教的使命感」という三つのキーワードが浮かび上がる。この構造を理解してこそ、和辻哲郎が問い続けた「日本人とは何か」という問いの切実さが見えてくる。
浮世ばなれした哲学の、意外な現代性
筆者は一年にわたる連載において、和辻哲郎という一人の哲学者をつうじて、現代社会を理解するカギを探してきた。こうした研究は、一見するととても浮世ばなれしたものだ。戦争が起きているのに倫理学?日本人の伝統を何百ページも書いた倫理思想史??特攻隊が出撃し、国家が危機にある最中に、そんなことをしていられるのは、最近の流行語で言えば「上級国民」ということになるだろう。でも、そうでもないよ、ということを前回は書いた。その点を、最終回でもあるから、現代社会の具体例を用いて説明しておこう。
トランプ2.0を読み解く三つのキーワード
先﨑 彰容(せんざき あきなか)
社会構想大学院大学 社会構想研究科 研究科長・教授
思想史家。博士(文学)。1975年東京都生まれ。東京大学文学部倫理学科卒業、東北大学大学院日本思想史博士課程修了。日本大学危機管理学部教授を経て2025年4月より現職。『個人主義から〈自分らしさ〉へ』(東北大学出版会、2010年)、『ナショナリズムの復権』(ちくま新書、2013年)、『維新と敗戦』(晶文社、2018年)、『国家の尊厳』(新潮新書、2021年)、『本居宣長』(新潮選書、2024年)、『批評回帰宣言』(ミネルヴァ書房、2024年)、『知性の復権−「真の保守」を問う』(新潮新書、2025年)など著書多数。
今、トランプ2.0のアメリカが各地で問題を引き起こしている。グリーンランド領有への野心、ベネズエラ侵攻、そしてイラン戦争の開始。なぜこんなことをするのか。ドンロー主義とか、気の利いた説明をする学者も多いが、私は全く違う観点から理解すべきだと思う。三題噺的にいえば、未来、自由、そして宗教的使命感だ。この三つのキーワードを駆使して、少し考えを深めておこう。
例えば、テクノリバタリアンとして知られる人物にピーター・ティールがいる。同氏はトランプ政権の強力な支援者であり、日本では起業家としてよく知られた人物だ。彼は次のような世界観を持っている。私たちは「未来」に希望を持たねばならない。しかし未来には二種類あって、第一が水平的進歩といい、第二を垂直的進歩と名づける。水平的進歩とは、1➡nにする発想。つまり既存の価値をどんどん拡張することを進歩とみなす。よい例が1990年代以降のグローバル経済で、世界市場全体に同一規格の商品が拡張し、グローバルに同質化が進んだことである。恰好の例が中国で、アメリカ資本が開発した技術や商品を中国は奪い、国内を豊かにしたわけだ。
(※全文:2120文字 画像:あり)
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