国境、そして産学を越えた高度人材の流動がイノベーションには不可欠

海外で先端知識を身に付けた高度人材が世界を股にかけて研究や起業に取り組み、イノベーションを通じて母国、さらには全世界に恩恵をもたらす頭脳循環。循環網に加わるために、日本は何をすべきか?

移民が生み出すイノベーション

安田 聡子

安田 聡子

九州大学大学院経済学研究院教授、同大学科学技術イノベーション政策教育研究センター(CSTIPS)センター長
専門はイノベーション論および産学連携。国際学修士(カリフォルニア州立大学サクラメント校)、博士(学術、東京大学)。東京大学先端科学技術研究センター特任助手を経て、関西学院大学商学部講師、准教授、教授。同大学在職中に英国サセックス大学科学政策研究ユニット(SPRU)客員研究員および関西学院大学イノベーション・システム研究センター(IRC)センター長を経験。2022年に九州大学着任。

IBM、マイクロソフト、アルファベット(Google)、シャネル、フェデックス、マスターカード、スペースX。世界をリードするこれらのグローバル企業に共通するのは何か?答えはひとつ。移民出身者がCEOであることだ。世界を動かす米国系多国籍企業のリーダーは、長らくWASPが占めてきた。だが近年、米国で修士号や博士号を取得した移民出身者がその地位に就くことが増えている。スタートアップに注目すると、移民出身者の活躍はさらに目覚ましい。2022年の調査によれば、10億ドル以上の資産価値を持つ米国発スタートアップ、つまりユニコーン企業のうち約55%は、創業チームに1人以上の移民出身者が含まれていた

特にAIや医薬品など最先端分野での活躍が際立つ。南アフリカ出身のE・マスク氏率いるスペースXはその代表格だ。また、ビッグデータの管理・活用からAI開発までを統合するプラットフォームDatabricksを創業したA・ゴドシ氏(イラン出身)やI・ストイカ氏(ルーマニア出身)、さらにChatGPTの開発で世界を変えつつあるOpenAIの共同創設者の一人、W・ザレンバ氏(ポーランド出身)も重要な存在である。移民起業家たちによる革新が、今後も先端技術の進化を加速させることは想像に難くない。

(※全文:2638文字 画像:あり)

全文を読むには有料プランへのご登録が必要です。