50年100年後の高浜町を見据え 民間の立場から地域活性化を担う

飲食事業やフードコンサルティングを軸に外部でばかり活動してきた一方で、高浜町への恩返しをしたく地域活性に関心があった林幸二氏。官民連携で高浜町の活性化に取り組むなか、「地域プロジェクトマネージャー養成課程」に出会う。本課程で得た学び、現在の活動などを聞いた。

行政側の動きや共通言語を学び
地域の連携がよりスムーズに

林 幸二

林 幸二

クレア株式会社 代表取締役
舞鶴工業高等専門学校卒業後、神戸設計施工コンサルティング会社に入社。同社を退職後、調理師学校を経て有名店で修行を積み28歳で独立。国内外でチェーン店ビジネスを展開。1997年に株式会社フードプランニングを設立。飲食事業の海外進出や多店舗戦略のコンサルティングにも従事。2025年に高浜町で「若狭サーフホテル イルマーレ」オープンを機にクレア株式会社代表取締役就任。社会構想大学院大学「地域プロジェクトマネージャー養成課程」第6期修了生。

「地域プロジェクトマネージャー養成課程」(以下「本課程」)では、地域活性へ向けた産官学連携プロジェクトを計画・運営する際に、プロジェクト全体をマネジメントする「ブリッジ人材」を育成する。本課程は、多様な専門家が、地方自治体の考え方、地域活性化や産官学連携の手法・事例などについて、リアルかつ現在進行形の知識・スキルを提供。また、地方自治体に政策提言を行う機会も設けている。

第6期生として本課程を受講した林幸二氏。福井県高浜町で育ち、隣接する京都・舞鶴市にある舞鶴高専を卒業。民間企業に就職するも1年で方向転換。料理人を目指し調理師学校を経て関西有名料理店で修業。飲食ビジネスを志し28歳で独立。国内外でチェーン店ビジネスを展開し飲食業や海外進出などのフードコンサルティングを行う「フードプランニング」を設立した。

2001年頃、高浜町の第三セクターで道の駅等の総合プロデュースに関わり、行政と民間企業とのギャップを感じつつも契約終了までの13年間は経営黒字を連続達成。その後海外案件など多忙となったため、町との関係は疎遠となっていたが、近年になって「野瀬豊前町長のもと、行政・観光協会・民間が一体となり、高浜町を活性化していこうという動きのなかで『地域プロジェクトマネージャー養成課程』を知り、受講しました」と林氏。本課程を受講し「非常に勉強になった」と当時を振り返る。

「2001年当時は全く理解できなかった“行政側の動き方”を理解できたことで、受講後は連携がよりスムーズにできるようになりました」

EBPMなど政策に関連した共通言語を学べたこともコミュニケーションを図るうえで役立ったという。

政策提言では「これからもずっと海と暮らす」をテーマに「世界ブランド“TAKAHAMA”」を目指して人口1万人を維持できる観光産業の構築とブランド総合化による中期計画を提案した。美しい海と海岸線が魅力の高浜町。渋沢栄一や安田善次郎が「海水浴が国民の健康維持に繋がる」と考え、日本の海水浴の普及を行うと“熱海を超す日本一観光客が訪れる海水浴場”となった。

しかし、時代の変化とともに観光客は減り、活気が失われている。そんな高浜町を、バリやサンセバスチャンのように「世界から人が訪れる観光地へ」特に世界の富裕層が訪れる観光地を目指し、東南アジアを中心に欧米や2014年には東京にもラグジュアリーホテルを展開する「Aman Resorts」の誘致なども提案した。

観光で自立できる町を目指す
「世界に誇れる高浜町」へ

2025年6月、林氏は政策提言のアイデアの1つである富裕層をターゲットにした観光事業として「Wakasa SurfHotel ILMARE」(若狭サーフホテル イルマーレ)を町が再生構想を展開する海岸線「高浜シーサイドライン」に県の補助6000万円を得てオープンした。

同ホテルは、地中海ヴィラをイメージし、家具や寝具など細部までこだわった全室オーシャンビューの7部屋を備える。屋上には天空テラスのバレルサウナとジャグジー、1階にはインフィニティプールもある。また、地域の食材を生かした料理が味わえるレストランでの食事や、砂浜アート、焚火といった体験・アクティビティなども楽しめる。

「若狭サーフホテル イルマーレ」は全室テラス付オーシャンビュー。外国人観光客からの人気が高い。

「富裕層をターゲットに、海の見える一番いい場所で勝負をかけましたが、開けてみれば宿泊客の6割は欧米からの外国人観光客です」

高浜町では数百軒以上ある空き家が問題となっており、人口の維持・増加は大きな課題。林氏の目指す未来の高浜町の姿は「国内では軽井沢」がモデルだという。

「将来的には、原発に頼らず、自力で町を維持できることが理想です。そのためには、観光に力を入れていく必要があります。富裕層が来ることで、シビックプライドが生まれ、町のプレイヤー、チャレンジャーのレベルも上がる。50年後、100年後の高浜町を子どもたちが夢と誇りをもって生きられる町にしていきたい。世界に誇れる高浜町を、民間として行政や観光協会と一緒に創り上げていきたいですね」

本課程について「行政と絡む民間企業や『町を変えたい』という人は、みんな必ず受けた方がいい」と林氏は力を込める。

「民間レベルの取引、利益の話をしても、利益で動いていない行政には伝わりません。その温度差とスキーム・戦略の違いを理解することは重要です。一方、行政の方も受けてみていただきたい。民間が行政のことを知り、行政が民間のことを知ることで、より円滑な国づくり、国家の底上げができるはずです」

Evidence-Based Policy Makingの略。証拠に基づく政策立案。