「オモシロイ会社」の次世代起業家教育 どのような個性も強みに変える
同社を率いる西崎康平氏は、企業のブランディングを手掛ける一方で、子どもへの起業家教育に情熱を注いでいる。本業とは一見異なる領域に挑む背景には、自身の就職活動における原体験があった。単なる知識の伝達ではなく、社会の選択肢を早期に示すことで人生の豊かさを追求し、子ども達それぞれが持つ特性を才能へと転換させる。さらには地域社会へ著書の寄贈活動を通じて、志を共にする企業との連携を加速させる同氏の革新的な教育構想を掘り下げる。本記事は、X(旧Twitter)スペースで配信された音声インタビューの内容を再構成した。
就職活動時の後悔を原点に
早期に社会の選択肢を示す
西崎 康平
トゥモローゲート株式会社 代表取締役
1982年4月2日生まれ 福岡県出身。2010年 トゥモローゲート株式会社を設立 同社代表取締役に就任。企業理念を再設計しビジョンに向かう組織づくりをクリエイティブとロジックで提案する企ブランディングにより、外見だけではなく中身からオモシロイ会社づくりをバックアップします。現在、X(Twitter)フォロワー数11万人・YouTubeチャンネル登録者数20万人とSNSでの発信も極的に展開している。
── 本業のブランディングとは一見異なる子ども向けの教育に注力されるのはなぜですか。その根底にある背景や原体験をお聞かせください。
私が将来の志を定めたのは就職活動の時でした。そこで初めて「起業」という選択肢に出会いましたが、今振り返れば、もっと早い段階でビジネスの仕組みや面白さに気づけていれば、自分の人生のスピード感は全く違ったものになっていただろうという思いを抱いています。
失った時間は戻せませんが、次世代の子どもたちにはその「きっかけ」を提供したい。私たちのミッションである「世の中にきっかけを。」を体現する活動として、キャリア教育は不可欠なピースなのです。
早くから社会を知ることで、偏差値だけで進路を選ぶような日本の教育環境を変え、自分の意志で未来を切り拓く子どもを増やしたいと考えています。起業家教育は、停滞する日本社会に風穴を開ける第一歩の可能性を秘めています。
具体的な経営の事例について子どもたちに説明する西崎氏(トゥモローゲート株式会社提供)
経営の基礎知識や仕事のレベルを
高めるビジネス8か条
── 具体的な手法について伺います。小学生にコストやマネタイズを教える意図と、それによって子どもたちに生じる変化を教えてください。
子どもたちに早い段階からビジネスに興味を持ってもらい、将来の日本を背負う起業家やビジネスリーダーを育成することが目的です。月1回、年12回の授業を開講し、「ブランディング」、「マーケティング」、「コスト」といったかなりリアルな経営知識を、小中学生の目線で分かりやすく教えています。特に「コスト」の授業では、子どもたちから会社経営に必要なお金について質問が多く飛び交い、包み隠さず伝えました。家賃や光熱費、人件費といった現実の数字を知ることで、商売の厳しさと、それを乗り越えて利益を出す面白さが初めて理解できます。またスクールでは、生徒に身につけてほしいビジネススキルを「8つのルール」として設定。繰り返し伝えていくと、当初は一言も発せなかった子が、今では真っ先に手を挙げて発言するなど、確かな成長が見えています。
10年後を見据えた採用戦略
超長期のブランディングと投資
── 経営戦略としてこの活動をどう位置づけていますか。10年後を見据えた採用への影響や、今後の収益化の展望について伺います。
私は教育事業を「超長期の採用戦略」と定義しています。一般的な新卒採用は大学生や高校生がターゲットですが、それでは競合他社と同じ土俵での争奪戦になります。私たちは小学生のうちからトゥモローゲートという会社を知ってもらい、理念を理解したファンになってもらう道を選びました。
幼い頃に触れたワクワクする仕事の記憶は、10年後の就職活動において圧倒的なアドバンテージになります。現に、数年前に参加した子が中学生になり、「将来絶対に入社する」と色紙を持って遊びに来るケースが出ています。
個性が混ざり合った
組織のあり方
── 近年、不登校や発達障害を「強み」と捉える考え方が広がっていますが、組織のあり方として構想をお聞かせください。
不登校や発達障害を理由に、働く選択肢が狭められ、社会との関わりが限定されてしまう実情があります。
しかし「いろんな個性が混ざるからこそオモシロイ」というのが私たちの考えです。例えば、学校という既存の枠組みに馴染めない不登校の子どもたちに対して、ビジネス教育という「第二の居場所」を提供したいと考えています。
構想している「子ども取材サービス」では、学校に行けていない平日の時間を活用し、企業取材を通じて社会と接点を持つ場を作ります。子どもには嘘がつけませんから、大人の言葉よりも、子どもが感じた生の意見の方が企業の真の魅力を伝える可能性があります。これは不登校を「欠点」ではなく、平日に活動できるという「強み」に変える試みです。
発達障害と呼ばれる特性にしても、驚異的な空間把握能力や集中力、類まれな色彩感覚を持つ子などがたくさんいます。例えば、その高い空間把握能力を活かして3DプリンターやVR(仮想現実)空間で独創的な作品を生み出すなど、デジタル領域での可能性は計り知れません。経営者に必要なのは、その特性を活かせる職種や役割を新しく生み出すことです。既存の枠に人をはめるのではなく、人に合わせて仕事を創る。その多様性こそが、これからの日本経済を再建するための土台になります。
伊勢市長との対話・寄贈が拓く未来
地域教育への貢献と行政連携
── 伊勢市内の公立中学校に著書を寄贈され、市長と「キャリア教育」について意見交換されたと伺いました。この活動を踏まえた今後の展望を教えてください。
今回の寄贈は、子どもたちがビジネスや経営の考え方に触れる入り口を広げるための施策です。一人でも多くの生徒が働くことや社会の仕組みに興味を持ち、将来的に私たちが運営するビジネススクールに生徒として参加してくれることを期待しています。
また、同じ価値観や課題意識を持つ多様な企業と手を取り合い、地域や組織の枠を超えた連携を強めていきたいと考えています。