特集1 採用基準は、理念そのもの。
1 価値観は業績に直結するか
Joseph B. Fuller
ジョセフ・B・フラー
ハーバード・ビジネススクール教授。「Managing the Future of Work」を共同で率いる。2017年の『Dismissed by Degrees』は米国の求人票と在職者を突き合わせた。ある製造現場の監督職では、求人票の67%が大卒以上を求める一方、在職者の大卒率は16%。仕事ではなく求人票の書き方が変わった。これを「学位インフレ」と呼ぶ。2021年の『Hidden Workers』は、要件に完全一致しない履歴書を応募者管理システムが機械的に落とすため、働く意思も能力もありながら選考に進めない人が米国内で2,700万人規模に上るとした。人が足りないのではなく、探し方が人を除いている。
写真:Universitätsarchiv St.Gallen|Jesper Dijohn|HSGN 028/01698|CC BY-SA 4.0
シカゴ大学のルイジ・ジンガレスらは2015年、S&P500企業の85%が自社の価値観を公式に掲げる一方で、それが業績と相関しないことを示した。代わりに業績と結びついていたのは、従業員がその価値観を実感できているかである。「経営陣の行動は、言葉と一致している」「経営陣は正直で倫理的である」への同意が高い企業は、生産性も収益性も労使関係も良好で、求職者からの人気も高かった。
また、採用の際、面接で共感を問うても、必ずしも活躍する人材を見抜くことにはならない。172の研究を集約した2005年のメタ分析では、価値観の適合は組織コミットメントと0.51、離職意図と−0.35で結びつく一方、職務遂行との関係は0.07にとどまった。理念への共感は定着につながるが、成果には直接つながらない。そもそも、理念への共感は、候補者は誰でも口にする。面接で共感を聞くことそれ自体を考え直すべきかもしれない。
測っているつもりで測れていないのは、理念だけではない。ハーバード・ビジネス・スクールのジョセフ・フラーは2017年、本来は学位を必要としてこなかった職にまで企業が学位要件を課している実態を「学位インフレ」と名づけ、米国で600万を超える中位技能の職がその影響下にあると報告した。ハーバード・ビジネス・スクールはこの研究がスキルベース採用の動きを生む契機になったと位置づけている。
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