学生とのフェアな関係を構築し応募者数が約2倍へ増加 U-NEXT HOLDINGS

人気のドラマや映画、スポーツなどを配信する「U-NEXT」。その事業展開を行うU-NEXT HOLDINGSは、これまでに「地方創生インターン」など様々な採用企画を実施し、注目を集めてきた。その開催背景や効果について、人事統括部 採用戦略部長の野村大河氏に話を聞いた。

学生とのフェアな関係と
リーダー人材の獲得

野村 大河

野村 大河

株式会社U-NEXT HOLDINGS 人事統括部
採用戦略部長 ※取材時
USEN(現U-NEXT HOLDINGS)に新卒入社。企業向けネットワーク・セキュリティ・クラウドなどのICTソリューション営業に配属。その後、組織マネジメントや新規事業の立ち上げ、オフィスBGMの事業責任者を経て、2023年より採用戦略部長に就任。現在は新卒採用の責任者を務める。

コンテンツ配信のほか、通信やエネルギー、金融、不動産など、多角的に事業を展開するU-NEXT HOLDINGS。1961年に有線音楽放送という新しいサービスを創出して以来、現在掲げる企業スローガン「NEXT for U」の通りに、時代の潜在ニーズを先読みしたサービスを次々に展開してきた。

柔軟に変化し、ダイナミックに成長を続ける同社にとって、重要かつ不可欠な存在は次世代を担う人材だ。様々な採用企画を考えて新卒採用に取り組んできたなかで、採用全般における大切な考え方について、人事統括部 採用戦略部長の野村大河氏は次のように話す。

「1つは学生とのフェアな関係性を構築することです。当社はスローガンの通り、お客様をしっかりと知ることを重視しています。学生ともフラットな関係を築きながら本質を見極めることを大切にしています」

それを具体化した取り組みは以前から複数行っている。最終面接では不合格となっても、希望者を対象に復活選考が可能な「トライアウトリベンジ」や、面接官、面接場所を自由に選択できる「カスタマイズ面接」などがある。

「採用全般で大切にしているもう1つのことは、事業を担うリーダーを採用することです。当社は常に新しい事業を生み出しながら、事業を変革させてきましたが、その背景にはお客様のニーズの変化があります。それを敏感に掴み、事業を牽引するリーダーシップを発揮できる人材を求めています」

この採用方針を推進してきた同社では、以前と比べて応募数が2倍以上に増えているという。

「近年の学生はSDGsの広がりなどで公平性に対してより敏感になっていることもあり、当社の考え方に共感いただき、口コミで次の学年へも拡がっている効果だと思います」

採用企画「地方創生インターン」で
社員と学生が生活を共にする

同社は次世代のリーダー人材を獲得するために、これまでに様々な採用企画を実施してきた。その1つは、2023年の「地方創生インターン」だ。社会課題や地域課題に関心の強い学生と社員がチームを組み、現地のフィールドワークを通じて課題を捉える。最後には同社グループのソリューションを活用した解決プランを立案するという体験型インターンシップだ。

採用企画では、社員と学生が生活を共にし、膝を突き合わせて話し合い、深くコミュニケーションを行う。それにより資質を見極めると同時に、会社のことも理解してもらう機会になる

企画した背景について、野村氏は次のように説明する。

「一般的にインターンは都市圏で行われることが多く、地方からは参加しづらいものですが、資質のある人材は全国にいるためフェアに機会を提供したいと考えました。また、当社は全国に拠点があり、クライアントがいます。だからこそ都市だけではなく、実際に地域に行き、お客様の課題や事業の本質を理解することがリーダー人材には重要なのです」

体験型インターンシップは複数の地域およびテーマで実施している。その1つは宮城県気仙沼市で、テーマは「震災復興から未来へ。『海と生きる』気仙沼で、新しい産業のあり方を創造せよ」というものだ。復興を目指す宿泊施設の運営者などから課題をヒアリングし、解決策をチームで考えていく。チームは複数名の学生と、1人の社員で構成された。

「ポイントは社員と学生が衣食住を全て共にすることです。コミュニケーション量を増やしながら生活を一緒にすることで、人となりがわかります。他グループとの交流も行いながら、事業への理解を深めてもらいました」

この採用企画に参加した学生は入社の割合が高かったうえ、深く接するなかで資質を見極めたことにより、入社後1、2年目からリーダーシップを発揮して「エース的な存在」になる人材が多数いたという。

また、入社しなかった学生とも継続的に交流が続いていることも効果の1つと野村氏は話す。

「参加した学生は必然的に当社に対するエンゲージメントや興味関心、事業への解像度が高まります。関係性を続けることにより、第二新卒や中途採用など、その先の可能性を増やしていくことができると考えています」

学生に寄り添い
リアルな声を聴き続ける

同社は地方創生インターン以外にも、様々な採用企画に取り組んできた。それらに通底する考え方は、「学生の価値体験を向上させること」だ。

「大学2年生や3年生で将来を描くことは難しいものです。そこで当社は『マイパーパス』と表現し、事前にインターンシップに参加した目的や意図、就職活動で得たいことを言語化してもらいます。実際に経験した後に、何が変化したのか、どういう気づきが得られたのかを改めて言語化し、整理してもらうようにしています」

マイパーパスによる自身との会話によって、入社後のギャップおよび早期離職を防ぐことを狙う。また、「ここまで学生に寄り添う企業は他にない」と学生が感じることで、同社へのエンゲージメント向上や、信頼関係の構築につながるという。

事業が多角化、複雑化する同社にとって、入社後のギャップは大きな課題だ。そこに対しては別の視点から、「LIVEing!!(ライビング)」という企画名称で社員による生配信を行っている。異なる事業に所属するリーダー3人による鼎談で、複数のパターンを展開することにより、飾らない生の声を届け、事業全体を把握してもらう狙いだ。

今後はさらに少子化が進み、人材獲得がより困難になる時代において、企業が採用力を上げるために必要なことは何か。野村氏は次のように考えている。

「学生と深い対話によりフェアな関係のパートナーになることだと思います。私の肌感では就職に対する学生の不安は高まっていて、それは企業の実態が見えないからです。一方で、そこが透明化されて、リアルを知るとポジティブになり、エンゲージメントが高まることも実感しています。だからこそ企業側はどこまで学生視点に立てるかが重要で、私達は徹底した学生目線で採用を考え続けています。具体的には、選考中の学生やインターンシップ参加者、去年の内定者などにヒアリングを頻繁に行い、彼らと一緒に選考プロセスをつくっていくという感覚です。学生に寄り添うことが何よりも重要で、企業理念に基づく当社の変えられないポリシーですね」