サーバント・リーダーの育成へ 組織に求められる「困難への対処」

管理職自らが部下のニーズと利益を優先し、個々の自律と成長を支援する「サーバント・リーダーシップ」は、現代のマネジメントにおいて注目すべきアプローチである。その修得プロセスと企業に求められる取組みについて、金沢大学の鈴木智気講師に話を聞いた。

部下への支援・尊重は、
管理職にとって中核的な仕事

鈴木 智気

鈴木 智気

金沢大学 人間社会研究域 経済学経営学系 講師
1986年生まれ。同志社大学大学院商学研究科博士後期課程修了。博士(商学)。同志社大学商学部助教を経て、2021年より現職。組織論、マネジメント論、リーダーシップ論を専門に、フォロワーを中心に置いたリーダー・アプローチである「サーバント・リーダーシップ」をテーマとした研究を行っている。

── 管理職にとって、サーバント・リーダーシップの重要性をどのように見ていますか。

組織に責任を負う立場の個人が、ともに働く人々の人間的なニーズや利益を尊重し、個々の自律や成長を促すこと自体を目的に行動する。このような、フォロワーを中心に置いたリーダー・アプローチのことをサーバント・リーダーシップと呼びます。

たとえば、管理職自らが社員一人ひとりの価値意識や抱える問題、目指すキャリアなどを理解するよう努力し、自分の権限と責任、能力を活かして自律や成長の機会を提供し、彼ら・彼女らが充実して働くことのできる職場の実現に取り組むような人は、サーバント・リーダーシップの実践者と言えるでしょう。

規範論のような印象を受けるかもしれませんが、実証研究により管理職によるサーバント・リーダーシップの実践は、従業員やチームのパフォーマンス改善につながることが明らかにされています。とりわけ、社員の貢献意欲や心理的安全性、エンゲージメントなど、個々の潜在能力の発揮と結びつく点に特長があります。

人的資本経営や多様性の推進に表象されるように、現代の管理職にとって、部下の関心や能力を深く理解し、自律性を尊重すること、成長をサポートすることは、仕事の中核になりつつあります。この点、サーバント・リーダーシップが実務の世界に対して持つ意義は大きいと思います。

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