西田幾多郎『善の研究』を生んだ師と環境

日本初の哲学書『善の研究』の背景には、石川の地で育まれた学びの土壌と、著者・西田幾多郎を導いた一人の数学者の存在があった。石川県かほく市の西田幾多郎記念哲学館・浅見洋館長に、石川の地が生んだ師弟関係に宿る「人を育てる覚悟」と、その本質を聞いた。

「天下の書府」加賀が
育んだ学問の伝統

浅見 洋

浅見 洋

石川県西田幾多郎記念哲学館 館長
石川県立看護大学名誉教授。金沢大学大学院文学研究科哲学専攻修了、博士(文学・筑波大学)。日本哲学、宗教哲学、死生学、医療倫理を専門とし、西田哲学の形成過程の解明に取り組む。第16回比較思想学会研究奨励賞、第78回北國文化賞など数々の賞を受賞。

西田幾多郎は一八七〇年、現在の石川県かほく市に生まれた哲学者である。若くして姉や弟、さらには二人の娘を亡くすなど多くの悲哀を経験しながら思索を深め、四一歳のときに主著『善の研究』を世に問うた。主観と客観が分かれる以前の「純粋経験」を手がかりに、善とは何か、実在とは何かを論じた、日本初の本格的な哲学体系である。『善の研究』は大正・昭和を通じて旧制高校生の必読書となり、京都帝国大学では三木清や西谷啓治ら京都学派を担う哲学者たちを育てた。西田が散策した琵琶湖疏水沿いの道は、「哲学の道」として京都の名所となっている。西田の才能をいち早く見出し、…

(※全文:2227文字 画像:あり)

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