学び直しを促進するためには、制度的インセンティブが不可欠

社会人の学び直しを促進するためには、どのような政策や制度が必要なのか。リカレント教育の抑制要因を文化的・制度的に分析する研究を行い、昨年には編著『人生100年時代に「学び直し」を問う』を上梓した愛知大学・加藤潤教授に話を聞いた。

制度の抜本的な変革により
イギリスでは学び直しが活発化

加藤 潤

加藤 潤

愛知大学 文学部 教授
1955年生まれ。1979年、愛知教育大学教育学部を卒業。1987年、名古屋大学大学院 教育学研究科 博士課程後期満期退学(教育学修士)。名古屋外国語大学助教授等を経て、2012年より愛知大学文学部教授。2017~2018年、オークランド大学(ニュージーランド)教育学部客員教授(サバティカル)。編著に『人生100 年時代に「学び直し」を問う』(東信堂、2023年)など。

──日本のリカレント教育の課題について、どのように見ていますか。

私はリカレント教育に関して、イギリス人を主な調査対象とし、日本人と欧米人の労働観、人生観、転職観などを比較分析しました。現在のイギリスでは転職するライフスタイルが浸透していますが、イギリス人は昔から労働移動に積極的だったわけではありません。イギリス人の労働流動性が高まったのは、80年代のサッチャー政権以降です。

サッチャー政権は市場主義型へと社会システムを変革しました。それに伴い、かつてイギリスの教育制度は低所得者層の学歴を高くするためのアファーマティブ・アクション(是正措置)が中心でしたが、80年代以降は競争原理の中で、…

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