【9月18日関芳弘文部科学大臣就任会見要旨】「人材こそ一番大事な資源」 研究力の抜本的強化とAI時代の学び語る

関芳弘文部科学大臣は2026年9月18日、就任記者会見を開いた。関大臣は、文部科学省が担う教育、科学技術・学術、スポーツ、文化を、人の可能性を引き出して日本の未来を切り開く重要な分野と位置づけた。そのうえで、各分野の現場の声を聞きながら、未来への投資となる文部科学行政を前に進める考えを示している。会見では、AIを使った学びやデジタル教科書、教員の働き方、奨学金、科学技術政策、平和学習などについて質問が相次いだ。

アジア大会の意義強調

冒頭、関大臣は、翌19日に開幕した第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)について報告した。アジア最大の総合スポーツ大会で、日本での開催は1994年の広島大会以来、32年ぶり3度目となる。関大臣は、準備を進めてきた公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会をはじめとする関係者に謝意を表した。アジア競技大会とアジアパラ競技大会の開催は、スポーツの振興や共生社会の実現などに大きく貢献するものだという。安全・安心な大会運営を実現することで、日本への信頼や国際的な存在感も一段と高まるとの認識も示した。

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記者からは、世界各地で国や地域の間の争いが続くなか、大会が平和にどう貢献できるかを問う質問も出た。関大臣は、共生社会の実現をはじめとする大会の目的がかなう大きな機会になるとの見方を示し、大会の精神ができる限り実現されるよう国としても応援したいと答えた。

最大の課題は人材力の向上

経済産業や環境の分野での経験が長い関大臣に対し、記者はまず、文部科学行政の最大の課題をどう捉えているかを尋ねた。関大臣は、資源の限られた日本にとって人材こそが一番大事な資源であり、あらゆる分野で人材の力を高めることが急務だと答えた。

政府が掲げる戦略17分野の推進にも話は及んだ。関大臣は、自民党の科学技術・イノベーション戦略調査会で副会長を務め、半導体戦略に関わる議員連盟の設立に携わって事務局長も務めてきたと説明した。一連の活動を通じて研究力は欠かせない要素だと強く認識したとして、研究力の抜本的な強化に取り組む方針を掲げている。教育、科学技術・学術、スポーツ、文化の各分野には、それぞれに現場がある。関大臣は、まず現場の状況を把握し、関係者の声を聞いたうえで必要な政策を進めるという。

内閣改造に当たって自民党内で実施された、希望する役職を尋ねるアンケートの回答内容も質問に上った。関大臣は、国民一人ひとりが自分の力を100%発揮できる社会をつくることが、政治家を志したときからの夢だと明かした。その実現につながる役職に就きたいと回答に書いたという。高市早苗内閣総理大臣からどのような強みを評価されたと考えるかについては、人事は首相の専権事項だとして、自身への評価への言及を控えた。一方で、大学改革や高等専門学校、専門学校の教育の充実を通じ、日本の将来の成長分野を担う人材を育てる政策の実現が期待されているとの受け止めを語っている。民間企業での勤務経験に加え、経済産業省と環境省で副大臣を務め、科学技術の政策に数多く関わってきた経験も、大臣の職務に生かせるとの考えだ。

AIの活用は情報活用能力の育成が前提

記者は、次期学習指導要領で小中学校の教育内容に初めてAIの活用が盛り込まれるなど、情報教育を大幅に拡充する方針がまとめられていると指摘した。その一方で、海外ではAIやSNSの利用を規制する国も出てきている。子どもの学びと情報技術との向き合い方を問われた関大臣は、生成AIなどのデジタル技術について、児童生徒一人ひとりのニーズや特性に合った学びを支えるうえで非常に価値があると評価した。ただし、使い方によっては、必要な学習の過程が省かれてしまうリスクもあると指摘している。

適切に活用するためには、メディアリテラシーや情報モラルを含めた情報活用能力を育てるとともに、子どもが安全かつ主体的にAIを使える学習環境を整える必要がある。関大臣は、文部科学省でもこの考え方に沿って検討が進められているとの認識を示した。

デジタル教科書をめぐっては、松本洋平前文部科学大臣が、一部の学年や教科では、すべてがデジタルの教科書を認めるべきではないとの方針を示していた。関大臣は、紙を中心とした学習環境を基本としながら、教科書にデジタルを上手に取り入れていくことが重要だと述べた。デジタルを含む新たな教科書のあり方は、会見の時点で有識者会議による検討が続いており、秋頃の取りまとめが目指されていた。関大臣は、まず有識者会議の議論を注視し、前大臣からの引き継ぎや多様な意見を踏まえて検討を進める方針だ。子ども一人ひとりがAIなどの技術やデジタルを含む教科書を適切に活用し、学びを充実させて学力の着実な向上につなげたいと語った。

高校時代の教師に学んだ「シーマンシップ」

学校教育で大切にしたい価値を問われると、関大臣は、教師の仕事は本当に尊い仕事だと強調した。学校は、子ども一人ひとりの発想力を豊かにし、可能性を最大限に伸ばす学びを実現する場所だという。

関大臣は、熱血的な教師が登場するテレビドラマの大ファンで、勉強だけでなく人生観や生き方についても感じ取ったと振り返った。徳島県出身の関大臣は、徳島県立城ノ内高等学校に在学していた頃の体験も紹介している。同県阿南市で行われた海洋訓練の際、教師から「シーマンシップ」という言葉を教わったそうだ。

教師はシーマンシップの意味を、木にたとえて説明した。周りの木より高く育った木は、台風が来ると上の方の枝が折れてしまう。その代わり、太陽の光をたくさん受けられ、強い風から周りの木を守ることもできる。仲間を助け、自らも大きく成長しようとする意思を持つことが、シーマンシップに生かされているという話だった。関大臣は、40年以上前に聞いた教師の言葉が今も心に残り、人のために働きたいという政治家としての志の根本になっていると語った。学校での教育は学問にとどまらず、人間形成にもつながると強く感じているという。

教職の魅力向上へ、経済的負担の軽減検討

記者は、中央教育審議会で教員養成や採用の改革が進められ、教育職員免許法の改正も近く予定されていると指摘した。松本前大臣も、会見前日の2026年9月17日の記者会見で、教職の魅力向上に向けた法改正を視野に入れて検討していると述べていた。

関大臣は、中央教育審議会で、教師を生涯にわたって学び続けられる魅力あふれる仕事にするための議論が進んでいると説明し、前大臣からの引き継ぎを踏まえて検討する考えを示した。教師が働きがいと働きやすさをともに実感できる環境を整えるほか、教師になる人の経済的な負担の軽減なども検討し、教師を目指す人が増える環境をつくりたいという。会見では、日々子どもたちのために力を尽くす全国の教職員に向けて、日本の教育や国力、人材力の向上に役立っていることへの感謝と敬意も伝えた。

奨学金事業の充実に取り組む

物価の上昇で学生の生活費の負担が重くなり、金利の上昇に伴って奨学金の返済額も増えている。学ぶ意欲のある若者への支援策を問われた関大臣は、高市首相から、意欲ある若者が進学を諦めたり、若い世代の家計に過度な負担が生じたりしないよう、奨学金事業の充実に取り組むよう指示を受けたと明かした。金利や物価の上昇で奨学金の返済と生活費の負担が増していることを踏まえ、経済的な理由で進学を諦める若者が出ないよう、事業の充実を図るとしている。

「科学の再興」に向けた4つの柱

科学技術政策について、関大臣は、科学技術・イノベーションは国力の源泉だと述べ、基礎研究や学術研究の国際的な優位性を取り戻すことを重要な課題に挙げた。第7期科学技術・イノベーション基本計画などを踏まえ、具体策として4つの柱を示している。1つ目は、科研費(科学研究費助成事業)の大幅な拡充による新たな研究領域の創出だ。2つ目に、優れた若手研究者の海外派遣の支援などを通じて、国際頭脳循環を強化することを挙げた。3つ目は、AIを使って科学研究を革新する「AI for Science」の推進である。4つ目として、産業競争力の強化にも貢献する新たな研究大学群の形成を掲げた。

さらに、AI、量子、半導体、フュージョンエネルギーをはじめとする戦略17分野を中心に研究開発を進め、国力の基盤となる人材の育成と、成長分野をけん引する科学技術力の強化に取り組む。科学技術政策の推進には他の省庁との連携が大事になるとして、連携を取りながら全力で取り組む姿勢を見せた。

原子力とフュージョンエネルギーの研究開発

エネルギー分野では、原子力とフュージョンエネルギー(核融合)について、エネルギー安全保障と地球温暖化対策の観点から取り組むことが非常に重要だと強調した。原子力では、次世代革新炉の社会実装に向けて、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の機能強化に取り組んでおり、研究開発や人材育成を含む幅広い取り組みを推進するという。フュージョンエネルギーについては、2026年7月に策定された官民投資ロードマップのもと、ITER(イーター)計画などの国家プロジェクトで培った世界トップレベルの技術力を生かす。人材育成も進めながら2030年代の発電の実現を目指し、競争力のあるシステムを世界に先駆けて確立したいとの意欲を示した。

同志社国際高等学校めぐる判断引き継ぐ

2026年3月、沖縄県名護市辺野古沖で、同志社国際高等学校の研修旅行中に転覆事故が起きた。文部科学省は同年5月、辺野古への移設工事に関する同校の学習が、政治的な活動を禁じる教育基本法に反するものだったとの見解をまとめている。記者は、関大臣もこの判断を踏襲するのかを尋ねた。

関大臣は、事故で亡くなった方への哀悼の意と、家族や事故に遭遇した人々へのお見舞いの言葉を述べた。そのうえで、文部科学省のこれまでの考え方をしっかりと引き継ぎ、必要な対応を進めると明言している。

会見の時点で、文部科学省は全国の学校を対象に、平和学習の内容を政治的中立の観点から見直し、確認する追加調査の集計を進めていた。関大臣は、作業が完了し次第、速やかに結果を公表する方針を示した。平和に関する学習は、教育基本法などに基づき、特定の見方や考え方に偏らない形で実施することが重要だとして、自らも取り組みを進めると述べた。

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