【11月6日細野豪志防災大臣会見要旨】避難所運営に「子どもの視点」、こども家庭庁と連携強化へ

細野豪志防災大臣は2026年11月6日、記者会見を開いた。冒頭、中司宏内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 規制改革 共生・共助)とともに子ども食堂を訪問することと、東日本大震災の被災地である岩手県、宮城県、福島県川内村への出張を報告した。質疑応答では、令和8年熊本地震から3カ月がたった被災地の課題、防災庁の緊急要請で国民に求めた「自助」と行政による「公助」の関係、津波避難ビルと津波避難タワーの整備状況について説明している。2026年11月2日の防災庁発足時の会見で、大規模な複合災害の際に他国が日本の弱い部分を突いてくる可能性に触れた発言が批判されている点についても、真意を語った。

避難所に「子どもの視点」を

細野大臣は11月8日、中司大臣とともに子ども食堂を訪れ、災害食を実際に食べる。災害食の質を高めると同時に、最終的に災害食を無駄にしない取り組みを政府として進める狙いがある。当日は子どもたちの様子も見る予定だという。

細野大臣は先日、中司大臣と話し合い、こども家庭庁と様々な分野で連携を強めていく考えを示した。大臣は、これまでの避難所運営には子どもの視点が根本的に欠けていたと指摘している。子どもは自ら声を上げにくいため、こども家庭庁の職員に避難所を回ってもらう。子どもに必要な空間があるのではないか、受験生のための学習スペースが必要ではないかといった視点から、避難所運営のあり方について具体的な助言を求める考えだ。熊本の被災地では、こうした取り組みが一部で行われたという。

大臣は、防災庁だけで全ての施策を担うことはできないとして、各省庁の力を借りながら政策を進めていく方針も示した。防災庁は内閣に直結する組織で、ほかの省庁から見て一段上に位置づけられる。大臣は、こうした立場を自覚して様々な課題に臨むと述べた。

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細野大臣は11月9日、東日本大震災の被災地のうち、まだ訪問できていなかった岩手県、宮城県、福島県川内村に出張する。達増拓也岩手県知事には、大臣就任のあいさつを行う。村井嘉浩宮城県知事はすでに大臣室を訪れているが、今回は大臣が現地に出向き、状況を詳しく聞き取る考えだ。川内村では、これまで様々な課題に共に取り組んできた遠藤雄幸川内村長にあいさつし、naturadistill 川内村蒸溜所も視察する予定である。災害対応が必要になった場合は、予定を変更する可能性があるとした。

熊本地震3カ月、避難所の今後が課題

細野大臣は11月3日、初代防災大臣として令和8年熊本地震の被災地を視察した。大臣は、発災から3カ月がたち、大きな課題として避難所を今後どうしていくかがあるとの認識を示した。仮設住宅の建設がかなり進み、仮設住宅などに移って避難所を出る人は増えてきた。一方、避難所に残る人はそれぞれ異なる事情を抱えている。一人ひとりの状況に合わせて支援する「ケースマネジメント」が極めて重要になっているという。自治体にはケースマネジメントを行える体制がある程度整っているとみており、状況がそれぞれ違う中で、防災庁として自治体をしっかり支えていく考えだ。

大臣は、熊本の教訓をこれからの災害対策に生かすことも重要だと述べた。視察ではペット同伴の避難所も訪れ、こうした避難所を災害対策として定着させる必要があると感じたという。アレルギーのある避難者もいるため、全ての避難者と同じ場所で過ごすことはできない。ペットだけを分けて預かるのか、飼い主と一緒に避難してもらうのかは、避難所の広さや災害の規模にもよる。大臣は、災害が起きてから考えるのではなく、事前にある程度用意しておく必要があると指摘した。ペットも被災者だという思いで、自治体と相談しながらできる限り取り組む姿勢を示している。

国難級の災害では「公助に限界」

防災庁が発足時に出した緊急要請では、国難級の災害を念頭に行政の対応には限界があるとして、国民に備蓄などの自助の徹底を求めた。SNSでは、無責任ではないか、防災庁が自らの存在を否定しているのではないかといった反発の声が上がっている。記者は、大規模災害の際の自助と公助の関係について、大臣の考えをあらためて尋ねた。

細野大臣はまず、防災庁は国民の命と生活を守るために全力を尽くすと強調した。鍵となるのは、避難所の運営を含め、清潔なトイレ、温かい食事、ベッド、風呂を示す「TKBB」をいかに早く届けるかである。防災庁は年内に、それぞれを何日以内に届けられるかという目標を設定したい考えだ。目標がなければ自治体は動けず、政府も具体的な支援体制をつくりにくいためだという。

ただ、国難級の災害は規模がまったく異なり、様々な複合災害を含めて大きなリスクをはらむ。目標を達成できるかどうかには、まだ相当の課題が残る。避難所の開設が遅れたり、物資を十分に届けられなかったりする事態も考えておかなければならないと、大臣は説明した。高齢者や障害のある人など支援が必要な人にできる限り寄り添えるよう、避難計画を含めた対応を急いでいるという。

家具の固定やハザードマップの確認も自助

大臣が国民に自助を求めるのは、自分で備えられる人が備えておけば、発災直後の行政の対応を本当に支援が必要な人に集中できるからだ。自助は一人ひとりの命を守ることにもつながる。求める内容は食べ物やトイレの備蓄に限らず、ハザードマップの確認や家具の固定も含まれる。防災庁としてやれることは全てやるものの、防災庁ができたからといって公助には限界があることを理解してほしいと訴えた。

会見の前日、11月5日は津波防災の日だった。記者は、防災庁が先日公表した津波避難ビルと津波避難タワーの整備状況について、進捗の受け止めと今後の支援策を尋ねた。

大臣によると、南海トラフ地震の最大死者は約30万人で、このうち7割にあたる21万5,000人が津波による死者とされている。大臣は、死者をできる限り減らすことが防災庁の最大の役割の一つであり、津波から住民の命を守るには避難してもらうしかないと強調した。津波避難ビルの指定や津波避難タワーの整備は、まさに最優先課題だと位置づけている。

避難ビルは442棟増の1万5,168棟

今回の調査では、2023年4月時点と比べ、津波避難ビルは442棟増えて1万5,168棟、津波避難タワーは44棟増えて594棟となった。ただ、想定される被害を踏まえると、住民の安全確保に十分な水準とは言えず、引き続き整備を進めるという。

自治体が行う津波避難施設の整備には、国土交通省の都市防災総合推進事業のほか、総務省の制度もあり、財政面で後押しする。防災庁は、こうした制度を使った津波避難タワーの整備を促すため、マニュアルや事例集を作成しており、取り組みをさらに進める。地域ごとに事情が大きく異なるため、どこに何が必要かを定量的に分析することもこれから必要になるとした。ふるさと防災職員が各地域と連携しながらきめ細かく支援し、何が必要かを見極めたうえで、ハード整備も含めてしっかり取り組む考えだ。

複合災害の教訓は最悪の事態への備え

細野大臣は11月2日の会見で、東日本大震災の時には日本への同情論があったが、震災から15年で世界は大きく変わり、日本で大きな複合災害が起きれば弱い部分をむしろ突いてくる可能性が出ていると述べていた。国名は挙げていない。この発言を巡り、立憲民主党の議員が、これまで助けてくれた国も助けてくれなくなる可能性があるとXに投稿するなど、批判の声が出ている。

大臣は、投稿したのは友人である議員だろうとしたうえで、東日本大震災の時に見えていた景色が二人で違ったのだろうと語った。大臣は、相手の議員が当時、被災者支援などで立派な仕事をしたと評価する一方、自身は地震、津波、原発事故が続いた複合災害の対応の最前線にいたと振り返った。大臣は当時の経験から、複合災害は大きな脅威であり、想定し得ない脅威が次々に現れると政府は極めて困難な状況に陥ると学んだという。最悪の事態に備え、できる限り事前に想定して臨まない限り、国難級の危機には対応できないというのが、大臣の得た教訓だ。

表に出なかった外交上の攻防

大臣は、震災当時は表に見えないところで、外交上の厳しいやり取りがあったことも明かした。原発の冷却が進まなかった際には、どの組織が最初に冷却にあたるかを巡り、政府内でも激しい議論があった。最終的には、最後のとりでである自衛隊が空中から最初に放水した。仮に放水ができなければ、同盟国である米国も、どこまで支援するかを相当ためらった面があったのは事実だという。国家的な危機では、まず自国がしっかり対応しなければ国を守れないということだ。日米同盟が揺らぐ可能性があると多くの国がみる中で、くさびを打ち込もうとする動きも当時あったと述べた。

南海トラフ地震や首都直下地震では、自衛隊の人員のおよそ半分にあたる10万人以上の自衛官を動員することになっている。残りの半分で日本を守れるのかを真剣に考えておくことが政治の役割だと、大臣は強調した。

岩手では心の相談体制維持が課題

記者は、11月9日の訪問で達増知事とどのような意見交換を想定しているか、県内の被災地の課題をどう考えているかを尋ねた。細野大臣は、達増知事とは国会議員時代から親しく、東日本大震災の後も岩手県をたびたび訪れ、様々な話をしてきたと振り返った。大臣就任後は電話で話すことも考えたがかなわず、直接話すのは今回が初めてになる。

大臣は岩手県の課題として、心の問題を抱える人が今もいることを挙げ、相談体制をしっかり維持する必要性を感じていると述べた。高台移転はかなり進んだものの、移転した場所をどう生かしていくかという課題もあると聞いているという。福島県と同様に、岩手県でも課題が個別化しているとみており、まずは話をしっかり聞きたいと語った。

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