【文科省議事録要旨】国立大学の第5期中期目標、2040年を見据え評価指標を2段階に 国立大学法人評価委員会

文部科学省は、2026年9月15日に対面とオンラインを組み合わせて開いた国立大学法人評価委員会(第82回)の議事録を、11月2日に公開した。委員会は審議事項3件をいずれも原案どおり承認した。3件は、国立大学法人等の組織及び業務全般の見直し、国立大学法人等の第5期中期目標・中期計画、国立大学法人等の第5期中期目標・中期計画及び評価等に関するワーキンググループの設置である。第5期中期目標期間は、2028年度から2033年度までの6年間にあたる。18歳人口の大幅な減少などを背景に、各法人に2040年を見据えた将来像を描くよう求める内容だ。会議では、運営費交付金の在り方に関する中間まとめと、人事給与マネジメント改革に関する参考事例集の報告もあった。

全85法人の聞き取りを基に見直しの視点

議論の土台となったのは、2025年11月に設置された「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直し等に関するワーキンググループ」の検討結果である。座長の大野英男氏(国立研究開発法人情報通信研究機構理事長、経済産業省特別顧問)は、5つのグループに分かれて全85法人へのヒアリングと意見交換を重ねてきたと報告した。

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大野座長は、18歳人口の大幅な減少に加え、AIをはじめとする技術も大きく変化していると指摘し、第5期をそのための重要な第一歩と位置づけた。人材や財源が限られるなかでは、各大学がすべての機能を単独で担い続けることはますます難しくなる、というのが座長の認識だ。そのうえで、研究インテグリティや研究セキュリティといった専門性の高い機能の共同化を例に挙げ、場合によっては統合も選択肢にしながら体制を考えてほしいと求めた。見直しを実行するには、予算の確保や制度の整備など文部科学省の支援が欠かせないとも述べている。

見直しの視点は、文部科学省が2025年11月に策定した「国立大学法人等改革基本方針」の構成に沿ってまとめられた。基本方針は、国立大学法人等全体のミッションとして3つを掲げている。不確実な社会を切り開く世界最高水準の研究の展開とイノベーションの牽引、変化する社会ニーズに応じた高度専門人材の育成、地域社会を先導する人材の育成と地域産業の振興である。各法人には、3つのミッションにどのような比重を置いて寄与するかを明確にし、2040年を見据えて自らの強みを描き直すことが求められる。

組織面では、学部や研究科の規模と在り方を早期に見直すよう促した。その際には、第7期科学技術・イノベーション基本計画なども踏まえ、人材需給のミスマッチを解消する観点を重視する。事務組織の見直しやデジタル・AI活用については、法人を超えた連携・統合と、教育研究活動も含めた全学的なAXの推進を盛り込んだ。教育面で掲げたのは、外国人留学生の受け入れと日本人学生の海外派遣の拡大、博士などの高度人材の育成、リ・スキリングの持続可能な体制整備である。研究面では、若手研究者や研究開発マネジメント人材の安定したポストの確保、全学的な研究インテグリティ・研究セキュリティの強化、AI for Scienceの推進を挙げた。大学共同利用機関法人については、国立大学法人との相違点を中心に別の視点が示された。3つのミッションのうち、世界最高水準の研究の展開とイノベーションの牽引を主なミッションとする内容である。

国公私の連携や財源確保に委員が意見

意見交換では、渡辺美代子委員(日本大学業務執行理事、特定非営利活動法人ウッドデッキ代表理事)が、国公私立大学の連携では公立大学や私立大学が先導役を担う形もあってよいと述べた。大学病院の厳しい経営状況については、国全体としての方針を示す必要があるとの考えも示している。江川雅子委員(学校法人成蹊学園学園長)は、法人ごとに取り組むべきことは大きく異なるとして、客観的な状況を早めに示して対応を促すよう求めた。あわせて、グローバル化に対応できる人材の育成が重要だとし、優秀な外国人材をしっかり受け入れるよう訴えた。

堀田貴嗣委員(東京都立大学副学長)は、研究データマネジメントでは大学図書館の役割が極めて大きいと指摘し、概要資料にもその点を記載するよう求めた。これに対し事務局は、概要への記載を工夫すると答えている。栗原美津枝委員(株式会社日本政策投資銀行設備投資研究所シニアエグゼクティブフェロー)は、建物の老朽化への対応や新たな研究施設の整備には、長期にわたる多額の投資が必要になると述べた。そのうえで、大学と文部科学省が議論して必要な投資を確保するよう求めている。第5期の期間に2040年は含まれないものの、2040年に向けて進むための非常に重要な期間だとも強調した。

内部学委員(時事通信社編集委員)は、水産系や商船系の船の更新には数十億円程度かかるとされる点を挙げ、他省庁の予算を充てられないか検討してほしいと述べた。若目田光生委員(株式会社日本総合研究所創発戦略センターシニアスペシャリスト)は、まず現場の研究者や職員が何に時間をかけているかを分析すべきだと提案した。各大学が個別に行う必要のない業務は、既存の役割分担にとらわれず大胆に共同化するという考え方だ。谷本和子委員(関西外国語大学副理事長、関西外国語大学短期大学部学長)は、地域の資源を生かした研究など、国立大学にしかできない研究への支援を拡充する必要性を訴えた。濱田州博委員(一般財団法人浅間リサーチエクステンションセンター理事長)は、事務組織のデジタル化について、好事例を他の法人に広げる仕組みを考えるよう求めた。附属病院と附属学校については、地域ごとの人口減少も加味した対応を求めている。

中期目標の選択方法を改善、評価指標は2段階に

第5期の中期目標は、国が示す中期目標大綱から各法人が項目を選ぶという第4期の枠組みを維持する。第4期は、教育研究の20項目から最大10項目程度を選ぶ方式だった。しかし事務局によると、法人のミッションに照らして全体最適な形で項目が選ばれていないという課題があった。そこで第5期の大綱素案では、項目を3つのミッションとのつながりが分かる形に整理し、カテゴリーごとに選ぶ数の目安を示した。たとえば「社会との共創」は、6項目から2項目程度を選ぶ。業務運営の改善及び効率化に関する事項から後の項目は、全法人に共通する取り組みとして必須とした。必須項目には、全学的なAXの推進や、研究インテグリティ・研究セキュリティの強化を含むリスクマネジメント体制の高度化が盛り込まれている。各法人は新たに「2040年を見据えた機能強化の全体像」を作成し、中期目標・中期計画の別添として提出する。この別添もあわせて公表される予定だ。

評価指標の扱いも変わる。第4期の「意欲的な評価指標」は、他法人と比べて卓越したものに限って指定していた。しかも、指定の手続きを中期目標・中期計画の策定プロセスが終わった後に行ったため、指定を受けた法人は40にとどまった。その結果、半数以上の法人にはこの指標がなく、法人評価で低い評価を受けるリスクを避けようと、無難な指標が設定されがちだったという。第5期では、従来の意欲的な評価指標に相当する「卓越した評価指標」に加え、「機能強化を先導する評価指標」を新たに設ける。新しい指標は他法人との比較までは求めず、自法人にとって達成に相応の挑戦が必要な指標を対象とし、全法人から申請を受け付ける。どちらの指標についても、達成水準に届かなかった場合は取り組みの進捗を確認したうえで評価することを、あらかじめ明示する。運営費交付金の配分でもプロジェクトを採択する際に考慮し、挑戦的な指標の設定を促す考えだ。

目標の多さや評価の観点に委員から意見

伊東幸宏委員(浜松地域イノベーション推進機構副理事長、フォトンバレーセンター長)は、3つのミッションへの比重の置き方と、項目の選び方の関係を尋ねた。事務局は、複数のミッションに同程度の重きを置く法人は、選ぶ項目数を増やしてもよい仕組みにしていると説明した。江川委員は、すべて選ぶと目標が全部で15になる点を挙げた。作業負担を減らし、計画の実効性を高めるためにも、目標をできるだけ骨太にまとめる努力をしてほしいという意見である。「社会との共創」の最初の項目に市場の創出が掲げられていることにも違和感を示した。これに対し事務局は、基礎研究の重要性は別の項目で確保していると答えている。

東陽介委員(森・濱田松本法律事務所外国法共同事業パートナー)は、教育の項目で在籍管理と安全保障貿易管理が一つにまとめられている点を取り上げた。先端研究分野における安全保障上の懸念への対応に、もっと力点を置いてもよかったのではないかと述べている。高濱滋委員(高濱公認会計士事務所所長)は、財務内容の改善に関する記載が概略的なものにとどまっていると指摘した。運営費交付金が増額されるのであれば、増額分を何に使うのかをある程度明示するよう法人に求めたほうがよいとの考えだ。

塚本恵委員(一般社団法人デジタルソサエティフォーラム代表理事、artience株式会社社外取締役)は、第4期の意欲的な評価指標は、何が認められるのか大学側に分かりにくかったと振り返った。そのうえで、最初から枠組みを示す今回の方式を評価している。折茂美保委員(ボストンコンサルティンググループ合同会社マネージング・ディレクター&パートナー)は、大学ごとに状況が大きく異なるとして、何をもって卓越、あるいは先導とみなすのかが今後重要な観点になると述べた。若目田委員は、リスクマネジメント体制について、文部科学省が共通の目標や水準を具体的に示すほうがシンプルではないかと提案した。蓼沼宏一委員(東京女子大学現代教養学部経済経営学科教授)は、2040年の見通しを起点に第5期を位置づける枠組みを評価した。文部科学省と各大学、ステークホルダーと各大学が対話を続けていくことが大事だと強調している。

評価方法を検討する新WGを設置

3件目の審議事項として、「国立大学法人等の第5期中期目標・中期計画及び評価等に関するワーキンググループ」の設置が承認された。新しいワーキンググループは、各法人から提出される中期目標・中期計画の素案を確認するとともに、第5期の国立大学法人評価の在り方などを検討する。委員は、大野座長のもとで組織及び業務全般の見直しを議論してきたワーキンググループのメンバーが、引き続き務める。

交付金を2層に、第1層は物価・人件費に連動

報告事項の1件目は、「第5期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金の在り方に関する検討会」が2026年7月29日に公表した中間まとめである。検討会の座長は、橋本雅博委員長(住友生命保険相互会社取締役会長・代表執行役)が務めている。中間まとめは、交付金を2つの層に大別した。教育研究の基盤を支える第1層と、各法人の戦略的な取り組みを推進する第2層だ。第1層は、物価や人件費の変動に連動させる。人件費については人事院勧告など労働市場の動向を反映できる算定方法を、物価については電子ジャーナルの価格高騰のような大学特有のコストを反映させる方法を追求するとした。第2層は、各法人のミッションや戦略に応じた取り組みと、その成果に基づいて資源を配分する。最終まとめは、2027年春ごろの公表を目指している。

事務局は、2027年度の概算要求で、国立大学法人運営費交付金を今年度予算から約1,540億円増の1兆2,512億円としたことも説明した。要求どおりに確保できれば、2004年度の法人化当初の予算額の水準に達するという。

人事制度の参考事例に岡山大・九州大・新潟大

報告事項の2件目は、文部科学省がまとめた「国立大学法人等人事給与マネジメント改革に関する参考事例集」である。各法人の人事戦略の検討に役立つ取り組みを7つの観点に沿って整理しており、事務局はそのうち3大学の事例を紹介した。

岡山大学は、岡山大学長期ビジョン2050の実現に向けて、「国立大学法人岡山大学における人事基本方針」を定めている。教員は、人文学・社会科学分野も含め、博士の学位を持ち優れた研究業績のある人から採用する。事例集によると、准教授などへの採用・昇任は、原則として博士号の取得後15年以内の人が対象だ。事務局はこの仕組みについて、15年以内に准教授に就けない場合はほかのキャリアパスを考えてもらう制度だと説明した。

九州大学は、独自の若手研究者雇用プログラム「稲盛フロンティアプログラム」で採用した若手研究者に、研究への専念を基本とする環境を用意している。教育・入試業務や各種会議への参加は免除される。若手に限らない「フリークォーター制度(FQR制度)」も設け、教員の教育や管理運営の業務を一定期間免除して、研究に専念できるようにした。取得期間は原則として1クォーター(3か月)で、在職年数などの取得要件は設けていない。

新潟大学は、URAをはじめ、産学・地域連携、教育、国際などの専門人材を、大学経営マネジメント人材「UA(University Administrator)職」と位置づけた。UA職は教員職とも事務職とも独立した職で、学長直轄の経営戦略本部UA室に集約されている。職階のうち主幹UAには、担当理事を補佐する副理事として執行部に登用されるキャリアパスも整えた。文部科学省は、人事給与マネジメント改革に関するガイドラインを、第5期の早い段階で見直す方針だ。

閉会にあたり、合田哲雄高等教育局長は、社会が注目している点を挙げた。大学に明確なビジョンがあるか、学長にそれを実行するリーダーシップがあるか、そして社会や産業を知的にリードしているかどうかである。合田局長は、2027年度と2028年度を、第5期に向けて一体で重要な2年間と位置づけた。各国立大学が中期目標・中期計画をめぐって議論する様子を社会に発信しながら、2027年度の予算確保に努める考えを示している。次回の総会は3月ごろに開かれ、中期目標変更原案と中期計画変更案を審議する予定だ。

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