人生の選択と幸福論 自己啓発本から何をどう学ぶべきか

アメリカ文学研究者の尾崎俊介教授は、世間で軽視されがちな自己啓発本を「幸福を追求する普遍的な文学ジャンル」として再評価する。ベンジャミン・フランクリンの『自伝』から始まる自己啓発本の歴史を紐解き、ビジネスパーソンにとっても意義のある自己啓発本の本質を読み解く。

自己啓発思想の二大潮流
「自助努力系」と「引き寄せ系」

尾崎 俊介

尾崎 俊介

愛知教育大学 教育学部 教授
1963年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科英米文学専攻後期博士課程単位取得。専門はアメリカ文学。アメリカン・ペーパーバック出版史を論じた『紙表紙の誘惑』(研究社、2002年)でデビューして以来、一貫してアメリカ大衆文学研究をライフワークとしている。「女性向けロマンス小説」の文学的価値を再評価した『ホールデンの肖像』(新宿書房、2014年)、『ハーレクイン・ロマンス』(平凡社新書、2019年)を著した後、「自己啓発本」の研究に取り組む。主な著書に『14歳からの自己啓発』(トランスビュー、2023年)、『アメリカは自己啓発本でできている』(平凡社、2024年)、『大学教授が解説 自己啓発の必読ランキング60』(KADOKAWA、2025年)など。

── なぜ尾崎先生は、自己啓発本の研究に取り組まれているのですか。

もともと私はアメリカの大衆文学を研究してきました。サリンジャーから始まり、ペーパーバック、そして「ハーレクイン・ロマンス」と呼ばれる女性向けロマンス小説と、10年ずつくらいかけて研究を進めてきました。そして女性向けロマンス小説の研究が一段落した後、行き着いたのが自己啓発本です。

きっかけは2013年の大晦日でした。書店で偶然に『印税で1億円稼ぐ』という本を手に取り、さらに友人から『原因と結果の法則』を薦められて読んでみたところ、「面白い!」と衝撃を受けました。最初は数年で研究を終えるつもりでしたが、始めてみると非常に奥が深く、10年以上が経った今も研究を続けています。

(※全文:2394文字 画像:あり)

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