特集1 採用から戦力化までの新設計 若手が育つ組織
少子化による人手不足、雇用の流動化、生成AIなどデジタル化の加速。これらが重なり合う今日、「若手をいかに育てるか」は、あらゆる企業にとって喫緊の課題となっている。本特集では、現場の実践例や専門家の知見を交えながら、「若手が育つ組織」の条件を多角的に探った。
調査から見える
若手・新入社員の意識変化」
「仕事よりも私生活を大切にしたい」「一つの会社に縛られず、自分らしいキャリアを歩みたい」――今の若手社員が抱くこうした価値観は、もはや少数意見ではないだろう。
「働くこと」に関する20代の意識は実際、どういった状況なのだろうか。リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査2025」によれば、「あなたが仕事をする上で重視することは何ですか?」では「成長」(35.1%)が最も多く、「貢献」(23.8%)、「専門性」(18.7%)と続いた。一方、最下位は「競争」(3.0%)だった。
「あなたはどのような特徴を持つ職場で働きたいですか?」では「お互いに助けあう」(69.4%)が最も高く、「お互いに個性を尊重する」(45.7%)、 「遠慮をせずに意見を言いあえる」(38.6%)と続いた。また、「あなたが上司に期待することは何ですか?」では「相手の意見や考え方に耳を傾けること」(49.7%)が最も多く、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」(47.9%)が続いた。最下位は「部下に仕事を任せること」(7.5%)だった。同調査では、理想の職場・上司の過去10年間を比較しており(図表1)、新入社員の意識の変化が読みとれる。
ただ、こうした変化に迎合して組織を変えることが正解ではないとリクルートマネジメントソリューションズ主任研究員の桑原正義氏は強調する。桑原氏には、上司と若手がジェネレーションギャップによる対立構造にならず、良い関係性をつくりだすためには何が必要なのかなどについて話を聞いた(➡こちらの記事)。
また、産業能率大学総合研究所が2024年8月に実施した「大卒1~3年目若手社員の実態調査」では男女の正社員・正職員を対象に働き方やキャリアに関する認識について調査。対象職種は営業や技術職など多岐にわたる。調査設計や分析レポートも担当した産業能率大学教授の齊藤弘通氏に調査から見えてきた若手の特徴や効果的な若手育成法など話を聞いた(➡こちらの記事)。
こうした調査から読み取れるものとは別に、いつの時代も聞かれる「今の若者」のイメージがある。だが、そこには実態との乖離があり、企業における若手の採用や育成にも大きな影響が生まれていると東京大学大学院講師の舟津昌平氏は指摘する。企業がとるべき若手人材対策とは何か舟津氏に話を聞いた(➡こちらの記事)。
3年以内の離職率3割に対して
企業に必要な視点・取組みとは?
厚生労働省が2025年10月に発表した「新規学卒就職者の離職状況」(2022年3月卒業者)によると、就職後3年以内の離職率は、新規大学卒就職者が33.8%だった。
3年以内離職率のうち、産業別で離職率の高い産業を見ると「宿泊業,飲食サービス業」(55.4%)が最も高く「生活関連サービス業,娯楽業」(55.4%)、「教育,学習支援業」(44.2%)と続いた。
若手社員の転職はどういった理由が多いのだろうか。パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」が実施した調査「転職理由ランキング【2025年版】」の「年代別の転職理由ランキング」では、20代の1位が「労働時間に不安(残業が多い/休日出勤がある)」(44.6%)で、「個人の成果で評価されない」(40.7%)、「給与が低い・昇給が見込めない」(37.0%)と続いた(図表2)。
人材研究所代表取締役社長の曽和利光氏に、新卒採用における現状の課題、企業は採用活動をどう再設計すべきなど話を聞いた(➡こちらの記事)。
また、新卒者の初期キャリア形成に影響を及ぼす要因に関する実証研究を重ねてきた大妻女子大学准教授の高崎美佐氏には、初期キャリア形成の支援に向けて、企業はどのような取組みが求められるのかなどについて、話を聞いた(➡こちらの記事)。
また、筑波大学ビジネスサイエンス系助教の池田めぐみ氏には、若手社員の成長に必要な経験、育成における3つの視点などについて寄稿いただいた(➡こちらの記事)。
AIの存在感が急速に増す現在、組織のマネジメントにも変化が見え始めている。京都大学経営管理大学院副院長・教授の関口倫紀氏にはAIが組織に及ぼす変化や、若手人材の採用や育成において重視すべきポイントなど話を聞いた(➡こちらの記事)。
企業の先進事例から考える
若手社員の定着・育成戦略
若手社員の定着や育成に向けて、企業はどのような取組みを実践しているのだろうか。これまで全国展開を行う大手企業への就職において、どの地域に配属になるかは企業が命運を握っていた。いわゆる「配属ガチャ」は、学生にとって不安要素になっている。それに対して三井住友海上は新たな採用制度「地元LOVE&PRIDE採用」を導入し、課題の解決に取り組んでいる(➡こちらの記事)。
三菱ガス化学は2024年から「若手社員の変革」に取り組み始めている。同社は従来から「自律的な人材」の持続的な輩出を大切にして育成を行ってきたが、現在はさまざまな観点から育成が困難になっていることを実感。その背景や実際の取り組み、効果について、同社の自閑大輔氏に話を聞いた(➡こちらの記事)。
本特集では、現場の実践例や専門家の知見を交えながら、「若手が育つ組織」の条件を多角的に探った。本特集が、自らの組織を見つめ直す一助となれば幸いだ。

