特集1 2025年の人材育成 AI活用のスキルで成長を加速
ChatGPTをはじめ生成AIの登場は、働き方や人材育成、専門職など様々な面で社会に大きなインパクトを与えつつある。こうした技術革新などにより社会が急速に変化していく中で、本特集では、「2025年、人材育成の潮流」と題し、今後を展望した。(編集部)
生成AI時代に対応した
専門職や人事部の在り方とは?
2022年末、米国Open AI社が公開したChatGPTをはじめ、急速に進化した生成AIの登場は、社会に大きなインパクトをもたらした。ボストン コンサルティング グループの予測によれば、世界の生成AIの市場規模は2022年の約90億ドルから2027年には1,200憶ドル規模に達すると試算されている※。
2024年12月、Open AI社は最新モデル「OpenAI o1(オーワン)」をリリース、「ChatGPT Pro」(月額200ドル)を発表したことで、改めて注目が集まっている。
こうした技術革新をはじめ社会が急速に変化していく中で、企業の人材育成やビジネスパーソンの働き方などにも変化が起きている。
労働政策研究の第一人者である神戸大学大学院教授の大内伸哉氏には、生成AI時代において、人材育成はどうあるべきかなどについて寄稿いただいた(➡こちらの記事)。
ChatGPTが注目を集めた当時、「AIに仕事が奪われるのか」といった話題が上ることもあった。実際、ITエンジニアの一部業務においてAIによる代替が可能といった声も聞かれる。そうした中、専門職の働き方は今後、どう変化していくのだろうか。同志社大学教授の藤本昌代氏に、AI技術の進歩と専門職の働き方について、寄稿いただいた(➡こちらの記事)。
生成AIのような技術革新以外からも社会の変化を促す要素がある。人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値の向上につなげる経営の在り方である「人的資本経営」の浸透もその一つといえる。
2020年9月、経済産業省が「人材版伊藤レポート」で人的資本経営のフレームワークを示し、その後、2022年5月、人的資本経営を実践に移していくための取組みや工夫をまとめた「人材版伊藤レポート2.0」を公表。また、同年8月には、日本企業における人的資本経営を実践と開示の両面から促進することを目的として「人的資本経営コンソーシアム」が設立された。人的資本経営が日本企業に浸透していく中で、人事の役割は、どのように変わる必要があるのか。東京都立大学大学院准教授の西村孝史氏に「組織力向上の担い手としての人事部」などについて、寄稿いただいた(➡こちらの記事)。
経営人材の育成など
政府が進めるリスキリング
2024 年10月、石破総理の所信表明演説では「教育やリ・スキリングなどの人的資源への最大限の投資が不可欠」と述べている。
経済産業省では、リスキリングと労働移動の円滑化を一体的に進める観点から、在職者が自らのキャリアについて民間の専門家に相談できる「キャリア相談対応」、それを踏まえてリスキリング講座を受講できる「リスキリング提供」、それらを踏まえた「転職支援」までを一体的に実施する体制を整備している。また、スキルアップに向けて受講するリスキリング講座の受講料について、最大70%の補助を受けられる仕組みを整え、2025年度も引き続きリスキリング支援に力を入れていく考えだ(➡こちらの記事)。
また、2024年11月に閣議決定された24年度補正予算案などから教育・人材育成に関する2025年度の政策動向を捉えることができる(➡p.36)。同補正予算案では「リカレント教育エコシステム構築支援事業」に21億円を計上(図表)。同事業は、地方創生に資する地域単位の産学官連携プラットフォームの構築・教育プログラムの開発や、産業成長に資する産学協働体制の構築・教育プログラムの開発を通じて、以下二つのアウトカムを掲げている。
政府が経営者等の能力構築に取り組むことを掲げている一方で、株式会社経営者JPでは、経営人材の採用支援・転職支援や、経営人材育成プログラム等の提供を行っている。同社代表取締役社長・CEOの井上和幸氏に、日本企業における経営人材に対するニーズや課題、経営人材に求められる能力・資質などについて話を聞いた(➡こちらの記事)。
Web3による新たな可能性
HRテクノロジーの最新動向
生成AI以外に注目を集めている先端テクノロジー領域の一つがWeb3だ。ブロックチェーン技術を基盤としたWeb3は、新たなビジネスモデルの構築や投資、社会課題の解決などにおいて様々な可能性を秘めている。一方で、日本では人材不足が大きな課題となっている。
2024年11月に設立された一般社団法人Web3人材マネジメント協会の代表理事を務める小宮滉氏に、同協会の活動やWeb3業界について話を聞いた(➡こちらの記事)。
また、米国ラスベガスで開催される世界最大の人事テックイベント「HR Techカンファレンス」を視察している株式会社Every代表取締役CEOの松澤勝充氏には、HRテクノロジーの最新動向などについて話を聞いた(➡こちらの記事)。
本特集は「2025年の人材育成」をテーマに、働き方、テクノロジー、経営人材、リスキリングなど、様々な角度から2025年を展望した。2025年に向けた新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いだ。

生成AIの登場など、急速な社会変化が人材育成や働き方などに大きなインパクトを与えている。
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※ボストン コンサルティング グループ 「The CEO’s Roadmap on Generative AI」(2023年3月)