【6月12日 松本洋平文部科学大臣 記者会見】「紙かデジタルか一概に言えない」教科書改正法成立、高専有識者会議を今月設置

デジタル教科書改正法成立 紙・デジタル・ハイブリッドの3形態へ

「学校教育法等の一部を改正する法律」が、2026年6月10日の参議院本会議で可決・成立した。松本洋平文部科学大臣は会見で、改正の趣旨についてデジタル化それ自体を目的とするものではないと強調した。「これまで紙だけが認められていた教科書にデジタルを取り入れて作成することを可能とすることにより、子供たちにとってより分かりやすく学びやすくすることが目的だ」と述べた。

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新制度のもとで教科書は、紙、完全デジタル、紙とデジタルを組み合わせた「ハイブリッド」の3種類となる。どの形態を選ぶかは各教育委員会が判断する。2030年度から順次、小中高校で使用が始まる見通しだ。今後は大臣指針や検定基準の策定を進める方針で、有識者会議において学年・教科別に紙とデジタルそれぞれの活用が期待される学習場面についてヒアリングを行うなど、検討を具体化していく。

記者から思考力・集中力・視力の低下を懸念する声への対応を問われると、松本大臣は「紙優位の結果が出ているものもあればデジタル優位の結果が出ているものもあり、一概に申し上げることは難しい」と答えた。大臣指針において書く活動を確保することの重要性や医学的知見を踏まえた健康上の留意点を明記するとともに、情報モラル教育の充実にも取り組む方針を示した。

高専機能強化へ今月中に有識者会議 年内に政策パッケージ

松本大臣は、高等専門学校の機能強化に向けた政策パッケージの方向性を提示した。量的拡大・質的向上・国際通用性確保の3観点から高度化を図る。具体的には、国立・私立の高等専門学校の新設に向けた支援、工学以外の領域への拡大検討、物価等に連動した運営費交付金の拡充、教員確保に向けた取り組み、本科卒業生への学位付与の検討などが挙げられた。

松本大臣は熊本高等専門学校を視察した際のエピソードを交えながら、社会・産業界からの期待の大きさを強調した。今月中に有識者会議を設置して速やかに議論を開始し、年内を目途に一定の取りまとめを行う方針を明らかにした。

H3ロケット6号機半年ぶりの再起に期待

松本大臣は冒頭、同日午前9時53分59秒にH3ロケット6号機(30形態試験機)が種子島宇宙センターから打ち上げられる予定であることに触れた。2025年12月のH3ロケット8号機の打ち上げ失敗以来初となる打ち上げで、固体ロケットブースターを装着しない「30形態」としても初の試験機にあたる。

松本大臣は「今回の打ち上げを無事に成功させ、今後とも打ち上げ実績を着実に積み重ねることで国内外の信頼を回復し、我が国の宇宙開発利用のさらなる発展につなげていきたい」と述べた。民間事業者の参入や打ち上げ頻度の向上に向けた取り組みも加速させる意向を示したうえで、「まずは本日の打ち上げをしっかりと見守りたい」と語った。

(編集部注)H3ロケット6号機は同日、ダミー衛星を搭載した第2段ロケットを予定の軌道に投入し、打ち上げに成功した。

クマ出没の休校判断は校長に 政府が対策動画を周知

クマの出没に伴う休校措置については、各地で臨時休校を余儀なくされる事案が相次いでいることを踏まえ、松本大臣は「学校教育法施行規則により校長が判断することとなっているが、各地域のクマの出没情報などを踏まえ、行政や地域とも連携のうえ適切に判断していただく必要がある」と説明した。文部科学省として、児童生徒などの安全を最優先に危険と判断した場合には躊躇なく休校などの措置を取るとともに、オンライン授業への切り替えも検討するよう求める考えを示した。

先月末には環境省と協力してクマ対策に関する動画を政府として作成・周知したことも紹介し、各地の先進的な危機管理マニュアルや取り組み事例を踏まえた注意喚起を引き続き行っていくとした。

W杯開幕 違法賭博に注意喚起し日本代表にエール

サッカーワールドカップの開幕にあたって松本大臣は、オンライン上の海外ベッティングサイト等を利用することが法律で禁止される賭博行為に該当するとして、国民に対し違法な賭博には関わらないよう改めて注意を呼びかけた。日本代表については「チームワークを元にチームとして一体となった戦いの中で素晴らしいパフォーマンスを示してもらいたい」と期待を語り、「初戦は来週月曜日の朝5時からと承知しているが、私も朝早起きをして応援したい」と述べた。

同志社国際高校問題 「平和学習の否定ではない」

同志社国際高等学校(京都府京田辺市)の研修旅行をめぐり、奈良県の被爆者団体が文部科学省の判断に抗議する声明を提出していた件について、松本大臣は「私自身が目を通して確認した」と明言した。

同事案は2026年3月16日、研修旅行中の生徒が辺野古移設反対の抗議活動に日常的に使用される船(いわゆる「抗議船」)に乗船するなどした平和学習の現場で起きた転覆事故に端を発する。文部科学省は同年5月22日に調査結果と見解を公表し、当該学習内容が政治的中立性を求める教育基本法第14条に違反すると初めて認定したうえで、学校法人同志社に対し改善を求める通知を出していた。

松本大臣は「今回の事案は政治的活動を行う抗議船として日常的に使用される船に生徒を乗船させるなどという極めて異例の事案への対応として見解を示したものであり、平和に関する学習を否定するものではない」と改めて強調した。学習指導要領等において沖縄戦や広島・長崎への原子爆弾投下など空襲の戦禍を被ったことに着目させ、平和で民主的な国際社会の実現に努めることの重要性を自覚させるよう定めていると説明した。また厚生労働省と連携して平和の語り部事業を推進するとともに、2025年7月に戦後80年や日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞受賞を踏まえた学習指導案を作成し活用を呼びかけていることも紹介した。今後の説明の場については「現時点で具体的な予定はないが、教育関係者との意見交換の機会があれば説明を行うことも考えていきたい」と語った。